やわらかな糸 黄昏れゆくウィーンのしらべ

MUSICASAで開催されましたソプラノ安田久美恵さんのリサイタル「うたvol.6」の伴奏をさせていただきました。

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19世紀末ウィーンで活躍した作曲家を集めた素敵なプログラム。ロット「すみれ」、シュレーカー「遊糸」、コルンゴルト「夏」など初めて演奏する曲もたくさん入っていて、音楽との新しい出会いが嬉しい一夜でした。

「ウィーンで活躍」と一口に言っても、世紀末を生きたそれぞれの作曲家の人生は十人十色。ブラームスのように若くして頭角を現し、充実した音楽人生を送った作曲家もいれば、H.ロットのようにブラームスから手酷くけなされ、ウィーンから去る電車の中で体調を崩し、失意のうちに亡くなった作曲家もいます。ロットの「すみれ」には、その儚さ、あやうさ、悲しさの響きが満ちていて、弾いていても胸がしめつけられるような感じがしてきました。そしてR.シュトラウスの「赤いばら」からあふれ出る官能の響き、ヴォルフの「ミニョン」に見られる圧倒的なドラマなど、この2ヵ月あまり、合わせ練習を重ね、準備に取り組む中で、次第に虜になっていきました。

繊細でチャーミングな歌唱と温かなお人柄の久美恵さんを応援するファンが詰めかけ、会場の皆さんの感性と私達奏者の「やわらかな糸」もしっかり結ばれたようなひとときでした。

そして、その傍らではベーゼンドルファーのウィーンナートーンが、ウィーンで生まれた音楽に寄り添い、包んでくれました。

天井が高く、奏者を取り囲むようなMUSICASAの空間がリートの演奏、聴取にピッタリで、隅々まで歌の細かなニュアンスが伝わっていく実感がありました。アンコールの最後は、ロットの「すみれ」に冒頭の音型がそっくりの「この道」。

打ち上げは、近所の居酒屋「どろまみれ」へ。モーツァルト研究の安田和信先生、今回ドイツ語の対訳をされた船木篤也先生、ベートーヴェン研究の沼口隆先生らと遅くまで音楽談義に花が咲きました。 

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