日本ピアノ調律師協会コンサート

築地の浜離宮朝日ホールで開かれた、日本ピアノ調律師協会主催のコンサートで弾かせていただきました。
「ショパンが愛したピアノ」と銘打たれたコンサートです。
プレイエルでショパンのノクターンとエチュードを、エラールで幻想曲とマズルカを、ベーゼンドルファでリストの「2つの伝説」など。

普段私が使っている楽器は、エラールがパリ製で1868年制作。プレイエルがパリ製で1843年制作。
本日弾かせていただいた楽器は、エラールがロンドン製で1845年制作。プレイエルが1840年制作。制作年代によって音色やタッチが微妙に違い、あらためて楽器は生き物であることを痛感しました。
プレイエルの柔らかい音色とタッチは、ときとして不安定要素ともなりますが、それが魅力でもあります。

クラヴィコードの演奏のときは、共有弦の2本は同時に鳴らすことができません。それをふまえて演奏しなくてはいけませんし、プレイエルの場合、鍵盤が戻りきる前に同音反復すると音が出ません。
そういう現代のピアノのときには考えなくてすむような「楽器のウィークポイント」を、体や感覚で覚えていくのはわくわくする過程です。
そして、楽器の性能を超えたテンポに上げすぎてはいけない、ということを肝に銘じました。
パリ製に比べて、がっしりとした感じのロンドン製エラールは、輝きのある音色で、現代に通じるピアノの原点を見た思いでした。
ショパンが愛したのはプレイエルだったけれど、メンデルスゾーン、リストなど、エラールを愛した多くのロマン派の作曲家たちの気持ちがよくわかる感じです。
最後に弾いたベーゼンドルファー。
我が家に戻ったような気持ちになりました。
リストは、まるでこの現代のピアノを予見していたかのような音楽をつくった作曲家。そのリストの晩年の作品から、宗教的感動を絵画的に描いた「2つの伝説」を弾きました。
3台置かなくてはならないので、ステージがいつもより窮屈でしたが、盛りだくさんの音たちに囲まれ、幸せな気持ちで弾かせていただきました。
アンコールは、ショパンに戻って、プレイエルで静かに、別れのワルツ、そして、エラールで幻想即興曲と子犬のワルツを、サロンで弾いているような気分で楽しく弾かせていただきました。
ショパン時代にタイムスリップした気分・・・とアンケートに書いてくださった方や3台の聴き比べが嬉しかったというご意見などを頂戴しました。

コメント