フィリップ・マヌリ室内楽作品演奏会@東京オペラシティリサイタルホール

現代フランス音楽を牽引してきたフィリップ・マヌリ氏の室内楽作品演奏会へ。東京オペラシティ文化財団と国立音楽大学の共催で実現した〈コンポージアム2019〉公演。
「Bパルティータ」の日本初演で始まった演奏会。2016年に亡くなったブーレーズへのオマージュが最後のBの音の持続として表れている、とのこと。、静かさの中にBの余韻が消えていくとき、ブーレーズへの想い、パルティータの源泉であるバッハへの想いが重なるような気がしてきました。鎮魂の鐘「おりん」の音がちょうどこのBの音にあたることをふと思い出しました。

舞台転換の時間を利用し、指揮の板倉康明氏が作曲家マヌリ氏に流暢なフランス語でインタビュー。「日本のミュージシャンを尊敬している」との言葉は板倉氏、そして今回ライブエレクトロニクスを担当された今井慎太郎先生ら、優秀な音楽家への賛辞であるとともに、懸命に音楽に向き合う学生たちへのエールにも聞こえました。そして今日の作品についての解説も。作曲家自身による言葉のあとで演奏を聴くことができるリアルな体験は、聴衆にとっても刺激的なものでした。

続いて、モチーフが全体の構造を支配するものの、意図的に異質の要素を盛り込むことにより、最後には構造が破壊されていく「ストレンジ・リチュアル」。断片、沈黙、反復、緊張、それらの連続の中で何かに抗う不思議な力が湧いてくるかのようでした。クラリネット、オーボエの近くで聴いたので、コンチェルト・グロッソ的要素も強く感じた次第。

そして休憩をはさみ後半は「驚くべきアイデンティティ」。多様なタイトルから成る7つの組曲をワクワクしながら聴きました。パウル・クレーの絵からインスピレーションを得た「高いC音の勲章」、「葬送」は、シェーンベルクのOP.19-6 を展開した「葬送」、ベルクの「ヴォツェック」のパラフレーズ。シェーンベルクがマーラーの埋葬を描いた絵画、そしてその印象をもとに作曲したOP.19-6。つい最近演奏会で弾いたばかりなので、とても興味があったのですが、どの和声がどう展開しているのかは一度聞いただけでは把握できず、ヴォツェックもどの部分がパラフレーズになっているのか楽譜を見ないことには・・・。

21人の奏者のための「ストレンジ・リチュアル」を22人で演奏した理由も含め、板倉氏に教えていただきたいなぁ。。と思いながら会場をあとにしました。

いずれにせよ、フランス現代音楽の巨匠の指導をまじかに受け、氏の言葉を直接聞き、そして氏の前で演奏することができる国立音大生の幸運な教育環境と創作科目会の企画力に拍手!の一夜でした。

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