オペラシティで開催された安田久美恵さんの演奏会に伺わせていただきました。
武久源造作品を集め「あらたし」と題されたコンサート。古楽器奏者として名高い武久さんが、こんなにたくさんの歌曲を作っておられたことを恥ずかしながらまったく存じ上げませんでした。
「新しい」という言葉は、その昔、「あらたしい」と読まれていたそうです。今も生まれ続ける「あらたしい歌」を未来に向けて紡いでいきたい、、、という久美恵さんのメッセージが心に響きました。
スクエアピアノの最初の一音が近江楽堂に響いた瞬間、非日常の世界に引き込まれるかのよう。時空を超えて「万葉集」の世界に生きる人々の心に飛んでいきました。
続いて、久美恵さんの美しくたおやかな歌唱で「マザーグース」「さんびか」、そして金子みすゞの「薔薇の根」など数編の詩につけられた歌が披露され、プログラムが進むにつれ、会場は武久ワールドに。。。
もちろん、伴奏は、作曲家である武久さんご自身によるもので、装飾や即興性に満ちた魅力的な音世界が広がりました。武久さん所蔵のスクエアピアノの音はとても豊かで、「伴奏」というより「ソロ楽器」のような風格とボリュームがあり、前奏、間奏、後奏の表現力は当然のことながら見事です。
オペラシティ所蔵のリードオルガンと交互に使いながら、それぞれの楽器の持ち味を生かしておられました。「僕の故郷 松山では、近所の人が野菜なんかがたくさん取れるとよく持ってきてくれました。僕の曲は、その野菜みたいなもの。歌で一儲けしようとか、まったく考えてないアマチュアですから、今日来ている音楽関係者の皆さん、ムキになって聞かないでくださいね。」のトークに会場は大爆笑!
「盲目の僕は、生まれてから一度も薔薇を見たことがありません。それなのに、まるで見えているかのように”薔薇”の歌を作るんですよ。」と笑って仰る武久さん。きっと美しい久美恵さんの姿も「見えて」いるのだと確信しました。
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