新入生のための「基礎ゼミ」は、大学生活へのガイダンスであり、込み入ったカリキュラム履修について先生や先輩からアドバイスをもらう機会でもあり、4年間の「くにおん」生活をいい形でスタートするための期間として設けられています。と同時に、私達教諭陣にとっても他の科の先生方のパフォーマンスに接することができる貴重な機会です。
今年も3日間、朝から夕方5時までのハードスケジュールが続き、コンサート、授業、講演など充実したプログラムが用意されました。
桜の季節に始まる、この「基礎ゼミ」期間、自分が大学に入学したころのことを思い出します。入学早々「水疱瘡」にかかってしまい、医務室の先生から「自宅待機」を仰せつかり、最初のレッスンを欠席。なんとも情けないスタートを切りました。分厚いカリキュラム表を配布される履修説明会後は、自己責任の日々。今のような懇切丁寧な仕組みにはなっていなかったように記憶しています。
今朝は、同じ声楽科のグループを担当する小泉惠子先生による「うたうこととは?」というレクチャーと演奏。
卒業生の盛田麻央さん、宮地江奈さん、宮西一弘さんも加わり、「日本歌曲」を堪能する内容となりました。美しい花岡千春先生のピアノのサポートで披露された16曲。滝廉太郎の「花」に始まり、山田耕筰「野薔薇」、「からたちの花」・・・・と続き、最後は木下牧子さんの「おんがく」まで。
1914年生まれの早坂文雄の「うぐいす」は、ピアノ伴奏なしで、小節線もない、「間」の美学と「静寂」の美しさを追求した曲。雅楽や絵巻物を思わせる音楽で、日本の歌、日本人の繊細な心情を音にした早坂氏の表現に感銘を受けました。
また加藤周一の「さくら横ちょう」の詩に、中田喜直、別宮貞雄それぞれが曲をつけており、この2曲が続けて演奏されました。同様に、「はなやぐ朝」でも大中恩と中田喜直の曲の比較。
同じ詩、同じ言葉でありながら、作曲家の感性を通して音になる瞬間、全く異なるイメージ、色、表現、情景が生まれ、別の音楽となることを実感。ふだん続けて聴くことがない2対の曲は、大変興味深いものでした。赤いドレスの宮地さん、青いドレスの盛田さん、二人の歌唱というのも印象的な演出でした。
私達日本人にとっての財産である童謡、抒情歌、日本歌曲。日本の音楽家として守り続けていきたいと切に願った90分でした。
上の写真は、素敵な笑顔でステージから降りてこられた小泉惠子先生(右から3番目)に、「さくら横ちょう」の写真を撮りましょうよ~!とお声をかけた瞬間です。
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