第一生命「モーツァルトの顔」

国際モーツァルテウム財団コレクションが、第一生命エントランスホールで披露されました。
第一生命110周年記念、第一生命ホール10周年記念の催しです。
題して「モーツァルトの顔」。

トルコ行進曲、きらきら星変奏曲の自筆譜などは、ファクシミリで見ていますが、実物のインクの色を見るとやはり、ドキドキします。モーツァルトが書きつけている様子が、彷彿と目の前に浮かんでくるような気がします。
1789年に描かれたランゲのモーツァルトの肖像画は、無数の複製が出回っていて、誰もがおなじみの表情ですが、この原画、日本では今回が初公開だそうです。
もっとくすんだ色のものを想像していたのですが、実物の絵は、はるかに色がはっきりしていました。
モーツァルトの遺髪は、柔らかいネコ毛でふわふわとしたブロンド。モーツァルトの音符の8分音符のしっぽのような感じの髪の毛でした。
ほかにもお洒落でセンスのいいタバコ入れ。
モーツァルトは、演奏謝礼としてタバコ入れを幼少の頃から受け取っていたそうで、大人になってからは、高価なパイプを好んだのだそうです。

それらに触れたあと第一生命ホールに移動。
海老澤敏先生のレクチャーとともに、コンサートが行われました。
モーツァルトが愛用したヴァイオリンとヴィオラが使われます。
プログラムは、弦楽四重奏曲KV160、ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 KV424、弦楽四重奏曲 KV173です。
ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の名手たち(フランク・シュタードラー、ウェルナー・ノイゲバウアー、ヘルバート・リンツベルガー、フローリアーン・ジンマ)の演奏は素晴らしいものでした。
まるで天国のモーツァルトが降りてきて演奏しているのかと思えるほど、モーツァルトが乗り移ったような音の粒子が会場にあふれました。
軽やかに飛翔し、上品なのに大胆で、ひとつひとつの音の意味が実際に出てくる音色とピタッとはまっているのです。
何とも心地よく、さすがモーツァルトを知り尽くしたメンバーの演奏でした。
ヴァイオリンはいくら名器が使われても、それを使いこなせていなかったり、楽器との相性が今一つ、というときには、名器の魅力が開花しないところがあります。
きょうのフランク・シュタードラー氏らは、まさに楽器と一体になり、どこまでが人間で、どこからが楽器なのか区別がつかない ― ヴァイオリンを「弾いている」ということすら忘れてしまうかのような名演でした。
ザルツブルク時代にモーツァルトが愛用していたヴァイオリンが、シュタドラー氏の手で、モーツァルト時代にタイムスリップしていました。

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