渡邊順生『ポッペアの戴冠』

一橋大学内の兼松講堂で開催された、モンテヴェルティのオペラ・セリア『ポッペアの戴冠』を鑑賞しました。
渡邊順生先生が、チェンバロを弾きながら指揮をされました。
『ポッペアの戴冠』は、1642年にヴェネツィアで初演されたバロック・オペラですが、とても新鮮で、4時間近い上演はあっという間に過ぎました。

ストーリーは、悪名高いローマ皇帝ネロ(ネローネ)に、貴人オットーネの妻ポッペアが近づき、ポッペアは夫を裏切ってネローネと結婚しようとしますが、ネローネは自分を諫める賢人セネカを自殺に追い込み、ポッペアはとうとう皇妃に登り詰めるという、ひどい物語です。
オペラには、幸運の女神、美徳の女神、愛の女神が登場しますが、終始、ポッペアを応援し、その野望の実現に手を貸すのが、愛の女神です。愛の女神は、皇妃オッタビヴィアがポッペアの暗殺を企てたときも、ポッペアの窮地を救ったりします。
渡邊順生先生のブログ に、さらにくわしい解説や、出演者の美しい写真があります。

ステージでは、本格的な舞台装置や照明は使われません。
それだけに、歌と管弦楽という音楽の力でステージはつくられていきます。
ポッペアを演じた阿部雅子さんをはじめとした若手の歌手陣はいずれも見事に大役をこなされていました。
立川での舞台では、純粋に音楽に集中して楽しみましたが、今回、演出家の方が入り、舞台としての楽しみ方に変化した感じです。乳母と哲学者セネカの存在感によって、劇にさらに奥行が出て、より大きなドラマ性を感じることになりました。

また、それぞの幕の開始前に、監修をされた礒山雅先生の解説がありましたが、立川のときと同様、たいへん分かり易く、ストーリーや見どころ、聴きどころを理解するのに大助かりでした。
礒山先生がおっしゃっていましたように、この「美しくも危険な世界」の「毒」にはまると、なかなか抜け出せないかもしれません。

poppea

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