東京交響楽団第707回定期演奏会

今日はサントリーホールで行われた東京交響楽団(指揮:原田慶太楼氏)の定期に。

冒頭は、小田実結子さん(1994年~)の新曲《Kaleidoscope of Tokyo》。多摩市出身の小田さんが、「東京の音」を作品に。華やかなネオンや雑踏の中に、自然の風景が混じります。タイトル通り、万華鏡のように、それぞれの楽器の魅力が浮かんでは消えていきます。聴きやすいメロディとともに、サントリーホールの会場が「音の万華鏡」に変容しました。

そしてソリストにアレクサンダー・ガヴリリュクを迎えてのグリークのピアノ協奏曲。知的なアプローチが一貫しており、決して鍵盤を叩くことがなく、自然で無駄の無いタッチ。もっとアグレッシブな演奏をする人だと勝手に想像していたのですが、その逆。軽やかで静謐で美しい音。オーケストラに埋もれてしまうことの方が多いのですが、そんな事は意に介せず、自分の音楽を奏でる。

オーケストラに対峙するために力む、ということが全くありません。ffを出すのは、ごくごく要所要所のみ。稀に見る静謐なコンチェルトでした。ウクライナ出身の彼を応援するために、最前列の男性はウクライナの青と黄色のマスクをしてウクライナ国旗を振りながら拍手。残念ながらガヴリリュクの目に入らずに終わってしまったけれど、あらためて「ウクライナ出身のピアニスト」であり、戦争から1年以上がたち、状況がよくならないことをあらためて思い起こさせました。

アンコールにショパンのノクターンop27-2。ロシアの圧政のもと、亡命作曲家の道を選んだポーランド出身のショパン、その思いを重ねての選曲のように感じてしまいました。

後半は、菅野祐悟さん(1977~)の交響曲第2番~すべては建築である~。「劇伴」を年に400曲ほど書いておられる作曲家。今日は劇を伴わない主役音楽としてサントリーホールに登場。4楽章からできており、菅野氏自身のプログラムノートによると、イタリア、スペイン、フランス、日本の建築を題材に作曲されたそうです。曲は建築のように積み重ねられるというより、次々に情景が視覚的に登場する印象。映画、ドラマ、アニメの分野で活躍する売れっ子作曲家による「交響曲」は、商業音楽、クラシック音楽、現代音楽という枠を気軽に超える「時代の波」を感じさせました。

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