ストラド&デル・ジェス コンサート2010

夜、紀尾井ホールに出かけました。

ストラド&デル・ジェス コンサート2010
 ~2つの1736年製ヴァイオリン ムンツ~
と題されたコンサートです。

日本音楽財団が保有する21挺の楽器の中から、同じ1736年に制作されたストラディヴァリウス「ムンツ」とグァルネリ・デル・ジェスの「ムンツ」の聴き比べという贅沢な夕べです。
紀尾井ホールが2つの名器の音色に満たされました。

これらの楽器の所有者だったバーミンガムのアマチュア演奏家、ムンツ氏にちなんでこの名前がつけられています。

ストラディヴァリウスの演奏は、有希マヌエラ・ヤンケさん、
グァルネリ・デル・ジェスの演奏は、渡辺玲子さん、
ピアノは、坂野伊都子さんでした。

グリーグのソナタ3番、
ヤナーチェクのソナタ 変イ短調が
それぞれの楽器で演奏されたあと
二人の二重奏で
サラサーテの「ナバラ」で華やかにコンサートがお開きとなりました。

1736年と言えばバッハが亡くなる14年ほど前。
アマティの弟子であるアントニオ・ストラディヴァリは、1644年生まれですから、なんと92歳のときの作品。亡くなる前の年につくられたことになります。
かたやバルトロメオ・ジュゼッペ・アントニオ・グァルネリは、1698年生まれなので38歳のときの作品です。
90歳を超えてまだ制作を続けていたストラディのエネルギーには驚きますが、日本で言えば、人間国宝みたいな存在なのでしょう。

最晩年のストラドと若きデル・ジェスを比べる、・・・
もし絵画であれば、並べてその差異を一目瞭然に感じることになりましょうが、楽器の場合、演奏者によって全く違う音色になり、単純に比較することはできません。
純粋に楽器の音色比較、というような学術的な学会であれば、同じ演奏者で比べなければ意味がないと思うのですが、演奏会ですから、そういう堅苦しいことはなし。
個性も音色も全く違う2人の名花による名器の演奏を楽しみました。

繊細な音色のストラディと力強いデル・ジェス。
ホールで聴くには、後者のほうが訴える力が強いように思えましたが、曲も違い、奏者も違い、という中で比べるのは早計かもしれません。

アンドレア・グァルネリの孫。楽器の内側にイエス・キリストを締めIHSの符号と十字架が書かれているそうで「デル・ジェス」(イエスの)と呼ばれるそうです。
横浜に住む知人の息子さんがクレモナの工房で楽器製作に励んでいます。
現代まで脈々とつらなっているヴァイオリン制作の歴史。
名工の技と楽器の神秘に酔いしれた1時間でした。

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