ジョン・エルウィス&渡邊順生「ドイツ・リートの夕べ」

午後から芸大で澤カルテットの皆さんとシューマンのピアノ五重奏の初顔合わせをさせていただきました。
久しぶりの芸大。キャッスル(学生食堂)のおじちゃまも健在。
久しぶりだね~!と珈琲やプリンをご馳走してくださいました。

ベーゼンドルファーが入ったヴィオラの市坪先生のお部屋。
室内楽の練習も充分可能なサイズです。
ピアノ五重奏曲は、弾くたびに好きになるシューマンの名曲です。

上野からトッパンホールに直行。
軽く夕食をとるため、ホールのレストランに行くと、思いがけず、渡邊順生先生がお一人でお食事をしておられ、ご一緒させていただきました。

リハーサルのこと、シューベルトのこと、今日の楽器のことなどお伺いし、期待をふくらましながら、会場へ。
池末さんが、最後の調整、調律の真っ最中。

ベートーヴェンの「遙かなる恋人に寄せて」と、シューベルトの「白鳥の歌」、それをウィーンのフォルテピアノで聴くことができた最高の晩でした。

ジョン・エルヴィースの歌唱は、ディクションが明確で、言葉の意味が音の流れと直結し、大きなドラマを形成していきます。
詩人が、主人公が目の前に現れたような錯覚を起こすような驚くべきリアリティのある歌でした。

特に、第2部の「別れ」、「アトラス」から「影法師」に至るまでの心情の表現は見事で、胸が熱くなりました。

渡邊先生のナネッテ・シュトライヒャーは、この曲のためにあるのかと思われるほど、音色がピッタリと寄り添い、表現をさらに引き立てていました。
現代ピアノで伴奏するときは、ピアノの音量が歌ににかぶさらないようにセーブしたり、コントロールすることが当然要求されるわけですが、フォルテピアノの場合は、楽器の音自体が自然に語ってくれます。

「アトラス」などでも渡邊先生の力強いフォルテッシモは、歌のフォルテッシモをさらに燃えさせ、効果を2倍、3倍にしている感じでした。
こまやかな息遣い、すっと消えるようなディミニエンドも素晴らしく、この曲の真価を見る思いがしました。

このナネッテ・シュトライヒャー、10月に、みなとみらいホールで弾かせていただくことになっています。
今からナネッテさんとの出会いに、胸をときめかしているところです。

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