バッハ「ロ短調 ミサ曲」

国立音楽大学講堂小ホールで、バッハのロ短調ミサ曲が演奏されました。
申込み開始後、2日で満員御礼になった鳴り物入りの演奏会です。響きのことを考え、あえて大ホールにせずに、小ホールで行われました。
日本初演から80周年を記念し、そして今年退官される礒山雅先生の「バッハ・プロジェクト」の最後を飾るイベントとなりました。
会場に着くと、すでに長蛇の列。先日、演奏させていただいた須坂バッハの会の会長さんや、遠くからのメンバーのお顔も見えます。

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声楽陣にも、そしてピリオド楽器の演奏陣にも知人が多く、バッハへの畏敬と情熱で結ばれた出演者の思いが、ひしひしと伝わってくる舞台でした。
合唱の編成は1パート4名。若手中心の第1部キューリエ(憐みの祈り)とグローリア(栄光の讃歌)。
一年間かけて、準備し、練習した成果が今、目の前にあります。
普通のコンサートであれば、数回のリハーサルで本番を迎えることが多いのですが、今回のコンサートでは、礒山雅先生、指揮の大塚直哉先生の指導のもと、勉強と研究を重ねたと聞いています。今回、出演された学生さんたちにとってこの貴重な機会は、大きな思い出となることと思います。

ロ短調で始まる Kyrie eleison、(主よ、憐みを)。
満員の場内は祈りに包まれました。
Gloria のナチュラル・トランペットの温かな、それでいて輝かしい喜びに満ちた音は、まさに「栄光」の響き。
カトリックのミサはミッションスクールの小学校時代に毎日行われていた、自分にとって馴染みの世界ですが、バッハの音楽は、宗派も国境も時代をも超越した、人類すべての者への愛を感じる音楽です。

バッハが最晩年に書き上げた後半。
アルトの加納悦子さんのA gnus Dei  は、空気をも変えてしまうほどの名唱。
会場が水を打ったような静寂に包まれ、神と精霊とバッハが降りてきたようでした。時空を超えた、神秘的な感動が会場を包みます。
人間の心の奥底からの祈りの言葉一つ一つが人の心に入り、涙があふれるような素晴らしさでした。

礒山先生はじめ、くにたちi Bachコレギウムのみなさんに、心からの尊敬と祝福を捧げたいと思います。

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