三戸誠 ヴィオラ・リサイタル

ヴィオラ、と聴いてどんなイメージをいだかれるでしょうか。
アンサンブルになくてはならない存在。女性の声に似た温かな音色・・・・
いいオーケストラやカルテットには、必ずいいヴィオラ奏者が座っています。
ヴァイオリンとチェロの中間にあって内声部を担当し、柔らかく響きを支えます。脇役という印象があるのですが、でもこのヴィオラによって、演奏全体の印象はガラリと変わります。
ヴィオラが美しいと旋律も下の声部もぐんと引き立ち、品格が上がり、充実感が全然違ってきます。

今日は、三戸誠先生のヴィオラ・リサイタル。
主役としてのヴィオラの音を堪能させていただきました。
自然な奏法から生まれる温かな音色。心の襞にしっとりと入ってくる、ヴィオラならではの魅力でした。

ブリテンの「ラクリメ」で悲しく静かに始まり、シューマンの「おとぎの絵本」のメルヘンの世界、そして前半最後は、ピアノを担当された小原孝さんが帽子をかぶってステージに登場。ベーゼンドルファーの美音を大胆に鳴らしながら、リズミカルなノリで挑発して、ピアソラのル・グラン・タンゴ。
後半最初の曲は、フンメルの」「モーツァルトの主題による幻想曲」。
ドン・ジョヴァンニのドン・オッタービオのアリア「私のいとしい人をなぐさめてください」をヴィオラ・ソロにした曲です。
フンメルがオッターヴィオのアリアを変奏のテーマとしてとりあげるたのが面白いですね。普通だったらドン・ジョヴァンニかレポレロ、あるいはツェルリーナのアリアをとりあげそうなのものに、なぜわざわざオッターヴィオ??????
おそらくヴィオラに合っている、とフンメルは思ったのでしょう。

オペラに想いを馳せたところで、名アルトの加納悦子さんも加わり、ブラームスの2つの歌「秘められた憧れ」、「聖なる子守唄」が歌われました。加納さんのしっとりした、そして強さと気品を持った美声が、銀座ヤマハホールの空間を満たしていきました。
それにしてもヴィオラの音色とアルトの声 ― 実に美しく溶け合います。
どこまでがヴィオラで、どこからが人の声なのか、一瞬わからなくなる瞬間があるほど、素晴らしいマッチングでした。

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