イェルク・デームス ピアノリサイタル

東京文化会館小ホールで、イェルク・デームス先生のリサイタルが行われました。
今年85歳になられるウィーン三羽烏の一人です。

前半は、ハ長調の大曲2曲。ベートーヴェン:ワルトシュタイン・ソナタとシューマンの「幻想曲」。どちらも先生の十八番です。

後半は、モーツァルトのハ短調「幻想曲」K396で始まり、それを前奏のようにしてハ長調の「ソナタ」K330 に続けて入られました。書で言うところの”草書”の世界を思わせる演奏。揺れ、跳ね、流れ、変幻自在に自由に羽ばたくようなモーツァルト。厳格なテンポを求める演奏とは対極にあり、独特の”ウィーンの香り”が音の間からあふれます。

デムス

長いプログラムの最後は、ベートーヴェンのソナタ作品109。アンコールのシューベルト「楽興の時」ヘ短調では、ピアノという楽器からも自由に解き放たれたような息遣いと歌心が心に沁みてきます。

楽壇デビュー70周年記念の今年は、各地で精力的に演奏会を開催されています。
プログラムには、1943年ウィーン楽友協会デビューコンサートのプログラムが掲載されていました。「わしは、120歳まで演奏会を続けることに決めた」と10年ほど前、弟子が集まっている中で冗談まじりにおっしゃって笑っておられましたが、冗談ではなくなる日が来そうなエネルギーでした。

デムスデビュー

コメント