澤クヮルテット デビュー30周年記念演奏会

澤クヮルテットのデビュー30周年記念演奏会にお伺いしました。プログラムは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番と第13番という大曲2曲。

「澤カル」のメンバーは澤和樹先生、大関博明先生、市坪俊彦さん、林俊昭さん。時の熟成を経て、硬い絆で緊密な糸を紡ぐ4人の姿。永遠のロマン、深い苦悩、強い意志、、、濃密な時間の中で、ベートーヴェンの想いがHAKUJU HALLのステージに浮かび上がりました。

ベートーヴェン研究の第一人者、平野昭先生による詳細なプログラム・ノートには、「弦楽四重奏曲への偉大な道のり」と題されて、弦楽四重奏曲全作品の一覧表も掲載されており、創作の全容が示されていました。

ピアノ・ソナタは1821年に作曲されたop.111が最後の作品となりますが、弦楽四重奏曲は1824年から26 年にかけての最晩年に5曲も書かれ続けます。病に倒れる中で、フーガ、変奏曲などバロックへの回帰をも含む大曲を構築するエネルギーはいったどこから生まれたのでしょうか。

第15番op.132の第3楽章コラールでは、はからずも涙が出ました。4つの弦の響きが、一つに溶け合う世界。争いや苦しみが地球を覆う現代において、平和への希求、祈りの心がベートーヴェンの音を通して語られているかのようでした。

1991年3月に結成された澤クヮルテット。デビューの年にロンドンでアマデウス弦楽四重奏団のマスタークラスを受講されたそうです。「40年間、同じメンバーで続けられたアマデウス弦楽四重奏団を目指して私達も10年後の40周年を目指します。その時は4人の平均年齢は後期高齢者。後期高齢者によるベートーヴェン後期作品!」とアンコール前にユーモアたっぷりのトークで会場を沸かせた澤先生でした。

 

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