春の高原に響く シュッツ:小教会コンチェルト

今年のGWは、間に平日が挟まり、細切れホリデイとなりました。でもベビーグリーンの輝き、澄み渡る青空、密やかに花開く菫、やはり春の美しさは格別です。

4月28 日には、八ヶ岳中央高原キリスト教会で開催された「春の高原に響く17世紀ドイツ・バロック」の演奏会に伺いました。

ドイツの三大B バッハ、ベートーヴェン、ブラームスは有名ですが、ドイツの三大S シュッツ、シャイト、シャインの知名度はいまひとつ。
けれど教会に集まった満員の聴衆は、風そよぐ緑の中でシュッツとシャイトの音楽とともに心洗われるひとときとなりました。
八ヶ岳中央高原キリスト教会は、シュッツの《小教会コンチェルト》の演奏会場にぴったりの空間。原謡子さんの澄んだ声と杉本周介さんの温かなオルガンの音色、笠原雅仁さんのテオルボの響きが重なり、教会の空間を満たしました。

バッハのちょうど100年前にこの世に生を受け、33歳から63歳という働き盛りの年齢を30年戦争と共に生きたシュッツ。肉親や近しい人との別れを度々経験する苦悩の中で、死に思いを馳せ、命を見つめ、音楽家としての人生を全うしました。深い祈りに満ちたシュッツの音楽に耳を傾けるうちに、心が澄んでいくような気持ちになります。きっと当時の人々も音楽に救いを求め、厳しい現実の向こうに希望の光を見出していたのかもしれません。

プログラム終盤、オルガン独奏と交互に歌うシャイトの《来たり給え、創造主なる聖霊よ》を全員で斉唱。ラテン語の曲をいきなり初見でなんて・・・と思いきや、教会に朗々と祈りの歌詞が響き渡りました。古楽合唱団メンバーの先導があったからこそですが、皆で息を合わせ心を一つにする感動的な時間!

前日のワークショップでは、studio R においてモンテヴェルディ「Cosi mi disprezzate (こうして私を軽蔑するのか)」など初期バロック作品の公開レッスンを拝聴。

杉本さんと笠原さんの対談コーナーでは、声楽とのアンサンブルにおける通奏低音の役割について語られました。詩に込められた思いに寄り添い、その表現を活かす通奏低音。カデンツや装飾をはじめ、基本の約束事の上に広がる自由な世界、言葉と音楽の密接な関連など、初期バロックの魅力にどっぷり浸った午後でした。

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