シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ

東京芸術劇場
シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ
指揮:グスターボ・ドゥダメル
 
まさに若さとパワーと熱狂のコンサートでした。
指揮者が登場、いきなりオーケストラ全員が立ち上がり(チェロさんたちは、座ったままですが・・)、
「君が代」演奏。
2曲目はベネズエラの国歌だったのだと思いますが、それが終わるとすぐに座って本プロ演奏開始。
8プルトの大編成で大迫力。
休憩時間に会った知人は、「すごいね!まるでスズメ蜂の大群だな~」と大興奮。
指揮のドゥダメルは、集中力とエネルギーで波を起こし、引っ張っていきます。
すべて暗譜ということもあって、動きが音楽に直結。
ステージマナーも、チェロとビオラのトップと肩を組んで挨拶したり、「ダフニスとクロエ」でがんばったフルートの女の子をその場で立ち上がらせるだけでなくって指揮台まで引っ張ってきて、その上、お辞儀させるなど、常識ぶっ飛ばしの面白さ。
とにかくその場にいあわせる人を”元気”にしてくれる特別の才能を持っている人でした。
チャイコフスキー5番のティンパニーは、フィギアスケートの回転のような速さでトレモロし、まったくバチが見えないほど。
しっとりした味わいや香り、深々とした響き、繊細さや官能性などを求める人には不満が残るかもしれませんが、時折、爆裂ギリギリのような金管の破裂音や唐突な荒削りさえもかえって魅力的でした。
はじけんばかりのエネルギーが完全はじけてしまったのが、アンコールの2曲。
待ってましたとばかり若い衆がステージに増え、バーンスタインのウェストサイドストーリーから「マンボ」と、ヒナステラのエスターシアから「マランボ」。
元祖「のだめカンタービレ」?!という感じで演奏中、「マンボ~!」と叫び、コントラバスをぐるぐる回し、
ヴァイオリンを宙に上げ、しまいには、立ち上がり、スウィングし、椅子の上でお立ち台よろしく踊ったり・・・
眉をしかめて出て行った保守的なお客様がたった一人だけいましたが、客席は興奮の坩堝と化し、1階席は、一番前の紳士数人を除いてすべて総立ち!
口笛と拍手とブラボーの嵐でした。
以前、デゥダメルがベルリンフィルを振っている場面を見たことがあるのですが、「何、このすごい才能!」と唖然としたことがありました。今夜は、思いがけず、ナマのデゥダメルの魔法に接し、血沸き踊る一晩でした。

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