後宮からの逃走

image
日生劇場でモーツァルトのオペラ《後宮からの逃走》を鑑賞。
川瀬賢太郎さんの若々しくエネルギッシュなタクトが、この時期のモーツァルトの作品にピタッとはまり、読響の名手たちにより、クオリティーの高い公演となりました。演出は兵庫県出身の田尾下哲さん。格子を回転させることで、後宮の内と外を表現。観客は、ベルモンテ(鈴木准さん)側に立ったり、コンスタンツェ(森谷真理さん)側の気持ちになったり、、、、。コンスタンツェの森谷真理さんは、強く逞しいヒロイックな声で?!気丈な女性を演じ、一方鈴木さんは、デリケートで純粋なヒーロー像を見事に体現。
恋人に会える喜びのアリア、ハーレムにいた彼女たちの浮気を疑う男二人の感情、コロラトゥーラを駆使してどんな苦痛も死も恐れない!と愛を謳いあげるクライマックス。どこを切ってもモーツァルトの魅力満載。
モーツァルトがウィーンで独立し、満を持して世に問うた作品のパワーをあらためて感じました。
中心人物の太守セリム(俳優の宍戸開さん)は、誇り高くエネルギーのある人物として描かれ、最後まで圧巻の存在感を示していました。このオペラは、ジングシュピール(歌芝居)ですから、台詞の場面と歌の場面が交互に現れます。今日は、台詞は日本語、歌はドイツ語。日本語とドイツ語では、声楽家の発声も異なりますし、「ここは日本の日生劇場」という現実感が細切れに出てしまい、流れに集中できない感じがしました。
日本語の挿入が難しいのは、格調の高さを維持しようとすると、口語体でなく文語体になってしまうことです。おそらくそこに旋律がついていれば、感じることのない違和感でしょう。歌の瞬間は生き生きしているのに、台詞の場面になるとオペラの訳本を読んでいるような印象になってしまうのです。
それにしてもトルコ人オスミンをここまで馬鹿にする?という演出。オスミン(志村文彦さん)に鬘をかぶせたり、禿げ頭をからかったり・・・。昔人気のお笑い番組「8時だよ全員集合」を思い出しました。
最後は、セリムの過去が明かされ、大どんでん返し。二組の若きカップルが幸福の船でトルコを出発するのを見送る、「赦し」の心を持った孤独なヒーローとなります。調和と平和の中に幕を閉じ、英気を舞台からもらって観客席を後にすることができました。
入口で「オペラ鑑賞事前学習用DVD」を配布してくださいました。客席に座る直前にいただいても・・・という感じもするのですが、オペラを広めたい、子供たちにもオペラに親しんでほしい、という文化貢献の現れ。来週、「オペラにまだ行ったことがない!」という中学生と一緒に見てみようと思います。
image

コメント