ベートーヴェン・チェロソナタの魅力

第35回そらまめの会「ベートーヴェン・チェロソナタ」@ハーモニーの家「渡邉暁雄メモリアルホール」にお伺いしました。
チェロは、酒井淳さん、フォルテピアノは渡邊順生先生。プログラムは、チェロ・ソナタ第1番、第4番、第5番。間に「魔笛」変奏曲。

酒井さんのチェロを初めて聴き、驚愕の一言。ベートーヴェンが乗り移ったかのような気迫と集中力、そして最弱音から轟音までのレンジの広さ。技ではなく息遣いが見えてくる弓さばき。太い足で楽器を抱え込み、太い指でがっしと掴まれたチェロから朗々と奏でられる低旋律。時折見せるユーモアと繊細さ。惚れ惚れする演奏でした。

1795年製ホフマンから奏でられる順生先生の繊細な弱音からは、現実離れした得も言われぬ世界が立ち現れ、あらためてウィーンのフォルテピアノの魅力を再認識しました。

この時期のウィーン式アクションのフォルテピアノには、モデレーター(弱音装置)がついており、ハンマーと弦の間に布がせり出してきて、現代のピアノからは考えられないほどの最弱音となります。最強音は、現代の楽器に比べたら足元にも及ばない音量なのですが、最弱音が聴こえるか聴こえないかの「超最弱音」であるため、そのデュナーミクの幅の広さが可能となります。

トークの中で順生先生は「酒井さんは、古楽器に精通しているため、本当のppを出してくれる。」と絶賛。

騒音や大音量が当たり前の現代、耳を澄まさないと聴こえないほどの弱音は、人の心を能動的にし、音に集中することで心が澄んでくる。。。
自然に囲まれたハーモニーの家。ヘ長調のソナタや変奏曲では、遠くの小鳥も鳴き声で演奏に参加。自然の中での自然な演奏。心に残る演奏会でした。

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