見事!ザ・クラリノッツ

先週に引き続き、ベーゼンドルファー・ジャパンにおきまして、「ベーゼンドルファー研修」。
演奏とレクチャーをさせていただきました。

ピアノ史概観に続き、ベーゼンドルファーの歴史、特徴、制作過程、ラインナップなど。
今回は、modelインペリアルに付加されているエキストラキー9鍵を使ったブゾー二の曲も紹介し、あらためて低音の魅力とフラッグモデルの豊かさを実感しました。

シューベルト、ブラームス、リヒャルト・シュトラウスなどウィーンで活躍した作曲家たちやベーゼンドルファーを愛用したことで知られるリストの作品などを演奏。国立音大売店やセミナーなどでもお世話になっている宮地楽器スタッフの皆様にもお会いでき、日頃の感謝の気持ちを込めて弾かせていただきました。

2時間枠を2回。さすがに喉が渇き、お水を一杯。終了後、直ちに大江戸線中野坂上から築地へ。
浜離宮朝日ホールで開催されましたクラリネットの演奏会に伺いました。
使用ピアノは、ベーゼンドルファーの新機種280VC です。

2005年、ウィーン・フィル首席クラリネット奏者エルンスト・オッテンザマーと、彼の2人の息子によって結成された「ザ・クラリノッツ」。昨年お父さんのエルンストさんが急逝され、今回は、実力派ピアニスト、クリスト・トラクスラー氏とともに来日。

驚異のクラリネット・ワールドを展開し、会場を魅了。素晴らしい演奏会でした。
午後の研修の折、「ベーゼンドルファーは、クラリネットのような柔らかな音色の楽器とは特に相性が良いのです」というお話をさせていただいたところだったのですが、まさにその証明のような音楽会となりました。

モーツァルトのケーゲルシュタット・トリオで開始したプログラム。お兄さんのダニエルさん(写真左側)がバセットホルンを担当。普段ヴィオラで演奏する声部をバセットホルンに編曲。新鮮でワクワクするようなモーツァルトを聴かせてくださいました。

現在ダニエルさんがウィーン・フィルの首席、弟のアンドレアスさんがベルリン・フィルの首席、という文句なしの超エリート兄弟。けれどステージマナーも表情も気取ったところは微塵もありません。

譜面台を長い脚で蹴っ飛ばしながらずらしたり、お兄さんが楽譜を楽屋に忘れて取りに行く間、弟がお喋り・・・などやんちゃな仕草と気さくな雰囲気でおばさま方の心を鷲づかみ。会場のほとんどを女性が占め、熱い視線と声援を送っておられました。

溢れるばかりの才能が自然にのびやかに花開いた、という風情でクラリネットと身体が完全に一体化。
リズムの躍動、音楽の表情、身体の動きが見事に合致しており、聴いていて小気味よく、爽やか。
アルフレート・プリング(1930~2014)やヨゼフ・ホロヴィッツ(1926~)らウィーン出身の現代曲を吹く際にも「声」のようにクラリネットを操り、演劇を見ているような錯覚にとらわれました。

クルーセル、ベールマン、バーンスタイン、ブルッフ、ティコティコと様々な音楽が並びますが、オッテンザマー兄弟の手にかかると難曲ではなく名曲に聴こえてしまうのでした。

アンコールはコヴァーチ:ハローフロムウィーンという、彼ら3人を象徴するかのような賑やかで楽しい曲で会場を沸かせ、最後はショスタコーヴィチのエレジーで静かに幕を閉じました。
イ長調の響きが空間にすっと消えていく最後の瞬間は、意識を失いそうになるほどの美音でした。
クラリネットが最も美しく響くハーモニーを知り抜いているのでしょう。

とにかくウィーンの美を体現してくれたトリオに大拍手!熱狂した聴衆が、CDのサイン会場に殺到。長蛇の列が2階の上まで続き、異常な盛り上がりを見せた浜離宮でした。

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