ベーゼンドルファー工房へ

朝9時半ウィーンのホテル出発。高速道路に乗り50分ほどでノイシュタットにあるベーゼンドルファー工場へ到着。時速130キロが制限速度のこちらの高速。おまけに国が地続きになっているヨーロッパは一歩間違えるととんでもないところにまで行ってしまうスリリングな道です。

明日の選定を前にピアノの調整に立ち合い、細部の打ち合わせや、アクション、タッチ、音色などについてのディスカッションが続きました。

この工房を訪れるたび、ベーゼンドルファーが自然の木から生まれる・・・ということをあらためて感じます。木のエネルギーに奏者の気を伝え、そこから生まれるヴァイブレーションで音楽を生み出す、その原点に立ち返るような気持ちになるのです。樹齢90年の木を新月の晩に切り出し、5年の歳月をかけて乾燥。さらに人の手により完成させていく。その100年近い時の流れが楽器の香りとなり、奏者はその音色を引き出す力を音楽の神様から頂く。。。

乾燥の結果、名器の材料として使えるかどうかが判断され、木材の半分近くは廃棄にまわり、冬の暖房の薪として燃えてしまうそうです。厳しいプロフェッショナルの目で選び抜かれ合格した木のみが楽器となる・・・。
音色に強さと柔らかさと深さを求める我儘な奏者のリクエストに対し、真摯に向き合ってくださるマイスターたちの姿勢と妥協のない伝統製法に対し、感謝と尊敬の気持ちで工場を後にしました。

ウィーン市内に戻り、マスタークラスでチェコから移動してきた高校生K子さんらと一緒に、マッシュルームフライ、ポークの煮込みなどで軽くランチ。午後の練習を終え、夜はベトナム料理のお店へ。どちらも一昨年行っている店なのですが、今回は、さほど感激せず。。。お店の味を守り続けるのは難しいのか、こちらの舌が変わったせいか。。。などと話しているところに、楽友のSさんから「昨日ハイドンザールにいらしたんですね。僕は今日行ったのですが、サイン帳を見てびっくりしました。」とメッセージが。お互い今、ウィーンにいるということがわかり、シュテファン寺院で待ち合わせをしてWINE & KOHで思いがけない再会に皆で乾杯と相成りました。SNSは一瞬にして旅人同士をつなげる「現代の結」ということかもしれません。

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