ピアノ選定

今回の旅のミッションであるピアノ選定の日です。
新しく来年オープンするホールに入るベーゼンドルファー モデル280VCを5台の中から選定させていただきました。

2500人収容の大ホールに入る楽器ですので、ボディ自体が豊かに響く必要があるのはもちろんですが、ベーゼンドルファーの個性である気品ある音色と温かな響きも兼ね備えていなければなりません。

高級で柔らかくてよく響くスプルースを楽器全体に使っているベーゼンドルファーは、その木の特性を生かす製法を今でも守り続けています。
自然の素材であるということは、各々の個性の違いも出てきます。目の前にそれぞれの異なる音色が5台並びました。5人の中から1人を日本に連れ帰りお嫁入り…責任重大な一瞬です。

3台はレンナー、2台はアーベル、という2メーカーのハンマーの違いも然り。
サロンに置くなら、この落ち着いた上品な音色のピアノ。中ホールに置くならこの温かい響きを持つピアノ・・・という具合に、鍵盤の上から下まで、弱音から強音まで様々な楽曲を弾きながら検討していきました。
それをじっと聴き、見守ってくださっていたホールのオーナー、技術陣、そして奏者の私の意見がぴったり一致。2500人の客席に相応しい1台が決まりました。力まないでも自然に豊かに響いてくれるボディ。
伸びやかな音色。強さとしなやかさを持つ楽器です。

合わせてロビーに置かれるスペシャルモデルのピアノの試弾とプレートデザイン選びなどにも参加させていただき、無事ミッションを終え、ほっと一息。
皆でノイシュタットにあるゴルフ場の中でランチ。美味なる、そしてワイルドなウィーン料理が目の前に運ばれ、コンペを終えた人たちの表彰式が行われているテーブルの隣で、ピアノ談義に花が咲きました。

強い音を出す頑丈さは、合理的で安価な方法で手に入れることができるのに、あえて時間をかけ、手間のかかるウィーンの伝統技法を守り続けるベーゼンドルファー。
日本の建築様式や和楽器の製法とも共通点があることを今回知りました。

夕方は久しぶりにシェーンブルン宮殿へ。スプルース、パイン、ウォルナット、ブナ、、、と工場でたくさんの木を見てきたあとなので、どうしても壁や調度品の木材に目が行ってしまいます。「くるみの間」と名付けられた上品な色あいの部屋。マホガニーをふんだんに使った家具など。。。6歳のモーツァルトが女帝マリア・テレジアの前で演奏した「鏡の間」をはじめ、ポーンと残響が残るお部屋が続きます。ワルツが踊られ、演奏が響き渡った往時の華やかなシーンを思い浮かべながらひとときを過ごしました。

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