エラール・1845年製

今日は、セレモアつくば埼玉本社チャリティーコンサートで、1845年製エラールを弾かせていただきました。
このエラールは、一昨年の東京春音楽祭で弾かせていただいた楽器です。
楽器に会ったとたん、そのときの記憶が蘇り、
「久しぶり~~~!!元気だった?」
と、思わず声をかけてしまいました。

ピアノは、人と同じく、そのときどきで体調や機嫌が異なり、本当に生きているのでは、と思える瞬間が多々あります。
今回も、前回のときとはまるで別人のようになっていて驚きました。ハンマーの打鍵回数、気温、湿度の変化など様々な要因が考えられます。

自分が所有している楽器の場合、自分にとって最善と思える方策をとり、修復家の方と相談しながら、オリジナルの状態に限りなく近づく工夫をしていきますが、お借りして演奏させていただく場合は、そのときの楽器の状態に自分を合わせ、ベストを出せるよう力を尽くすのが演奏者の使命です。
幸いホールの音響は良く、無理なく響かせることができ、フォルテも力まずに演奏することができました。

今回エラールを弾いて改めて感じたのが、この楽器の弾きやすさです。
「体調が悪いときはエラールを弾く。すぐに音が出てくれる」
というショパンの言葉が残っていますが、体調がいい悪いは別にして、「弾きやすいピアノ」と「弾きにくいピアノ」に分けたとすれば、エラールは、前者の代表です。
音色的には、プレイエルより硬質なのですが、ここぞ!というような華やかなパッセージにはもってこいの楽器。リストがその前半の人生で、エラールを中心に演奏活動を行ったのもよくわかります。今回も、特にリストの曲では最大の効果を発揮してくれて、自分の力以上の演奏を返してくれる楽器だと感じました。

ベーゼンドルファーやプレイエルを普段弾いているので、エラールが持つこのキンキンする堅さや派手さがどうにも違和感があるのですが、その点に目をつぶればやはり魅力のある楽器です。現代ピアノの元祖と言われる所以をあらためて実感できました。

共演には、カンツォーネの勝又晃さんをお招きし、イタリアの太陽を思わせる明るい声で数曲歌っていただきました。
「ブラーボ」の声をくださるお客様たちに、元気をお届けできたひとときでした。

「こんなピアノの音、聴けたの初めてよ。生きてて良かったわ!」
と握手してくださるお客様の笑顔で、私もまた元気を頂戴して坂戸の街をあとにしました。
お世話になりましたセレモアのスタッフの皆様、ありがとうございました。

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