ウィーンの鐘の音

今回もシュテファン寺院近くのホテルに宿泊しました。朝は鐘の音で起床。
来てすぐは、「カンカンカンカン」と無機質な響きに聴こえる鐘の音ですが、2日目か3日目くらいになると、鐘の音に感情や言葉を感じるようになります。

朝6時。4つ静かに鳴ったあとでゆったりと時報のように6回響きます。まるでGu-ten Mor-gen ! (おはよう~)、6時だ、そろそろ朝日が昇るよ!という感じ。
そして7時になると「ガンガン」とフォルテの鐘の音。
7時10分からは、数分に亘り、「ガガンガンガン」とフォルテッシモで打ち鳴らされます。「まさか、まだ寝ている奴はおらんだろうな!起きろ~」。

この鐘で寝続ける人はよほど図太い人。かく言う私もさすがにここで起きだし行動開始です。
着替えが終わるころには、鐘の音はだんだんとディミミニュエンド&リタルダンド。最後は1つの音がコーーーーン、と静かに空気に溶けていくようにして音が止みます。

ヨーロッパの人々の生活のリズムを刻む鐘の音。
そこに暮らす人々は、その音色から危険を知らせる警鐘なのか、哀しみに満ちた弔鐘であるのか、喜びの儀式の始まりを表す合図なのか、時を告げる鐘の音なのかを、子供の頃から感じながら生きてきているのかもしれません。

シューベルトの歌曲集「美しき水車小屋の娘」の中の1曲「好きな色」には、鐘の音が登場します。「弔鐘」を表すfaのシャープの音がずっと曲の間中、連打されるのです。
シューベルトもこのウィーンの街で生まれ、育ち、多くの音楽を作曲しました。

シューベルトが暮らした家、ハイドンが活躍した邸、モーツァルトがビリヤードで遊んだ部屋など、ウィーンには往時の空気がそのまま残り、街に響く鐘の音も変わらず鳴り続けています。時を経ても「変わらないもの」に感動しながらウィーンの朝を迎え、地下鉄U1に乗ってリハーサル会場のあるムジークフェラインに向かいました。

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