日本モーツァルト愛好会第525回例会

久しぶりの東京文化会館。大学時代、大学院時代、毎日通った上野は、自分にとって青春の街。東京文化会館の楽屋口には、リニューアル後も落書きがいっぱい描かれたコンクリートの柱が残されており、ステージに上がる古い階段は懐かしい想い出がいっぱい。

13時、箱入り娘のフォルテピアノ2台(2人)シュタインとヴァルター搬入とともに私も楽屋入り。15時半から2台の位置決めとリハーサル。そして舞台関係の打ち合わせとマイクチェック。環境の変化は古楽器にとってハードなこと。ステージに置いてあるだけで調律も狂ってきます。夏場の移動は調律師さん泣かせ。休憩中も寸暇を惜しんで調律の太田垣至さんが調律に入ってくださいました。

扇型の東京文化会館小ホールは、天上が高いせいもあって、古楽器の細い音、微かなPPも、一番後ろの席にまで届く実感がありました。

冒頭は、モーツァルトが「このソナタをシュタインで弾くと抜群によく響く」と手紙に書いたKV284《デュルニッツ》から。この楽器で弾くと、確かにfとpの頻繁な交代が小気味よく響きます。続く《きらきら星変奏曲》は変奏によってモデレータも使い、非日常のPPPを表現しました。

《ソナタKV331》は、自筆譜発見に基づくバージョンで。やはりトルコ行進曲はシュタインのはじける音色がピタリとはまります。ただモデレータストップが途中で1、2ミリ奥に引っ込んでしまい音域によってPPPになりきらない音があったり・・・。こんなトラブルもイライラせずに「あらら」と笑って楽しめる境地になりたいものです。

休憩後、後半は、ヴァルターで《ロンドKV511》を演奏。光と影の交錯、うつろい、微細な息遣いの表現は、ヴァルターあってこそ。

傑作《ソナタKV333》もモーツァルトのフォルテピアノへの習熟が生んだ傑作と言えましょう。ピアノ協奏曲第20番から第2楽章を弾き、モーツァルトがこの曲を弾くときに使ったペダル・クラヴィーアについてお話しさせていただき、最後に《ソナタKV545》。

アンコールに、先日ハイドンフィルと共演させていただいた《ジュノム》の一部を。しっとりした第2楽章をヴァルターで、溌剌とした第3楽章をシュタインで。

閉館10時!の厳しい掟の中、ホワイエで嬉しい出会いと再会。そして夜中11時半、箱入り娘とともに無事帰宅し?!「フォルテピアノ・チーム」にとっての長い一日が終わりました。

モーツァルト愛にあふれた皆様が、シュタインとヴァルターの「聴き比べ」、そして「モーツァルト時間」を楽しんでくださった真夏の演奏会。
猛暑の中ご来場くださいました皆様、お世話になりました日本モーツァルト愛好会の皆様、演奏会のためにご尽力くださいました皆様に心からの御礼を申し上げます。

コメント

  1. 小森靖一郎 より:

    モーツアルト愛好会の小森と申します。素晴らしいご公演のみならず、当ブログでの素敵なお写真と文章に益々ファン度?!アップいたしました。当日販売の係りだったので自らのCDの購入が間に合いませんでしたので、これから一つ一つ購入し、じっくりお聴きします!!

    • 久元 祐子 久元 祐子 より:

      小森様 移動が続き、御礼の返信が遅れてしまい、申し訳ありません。愛好会例会におきましては大変お世話になりましてありがとうございました。当日は愛好会の皆様にたくさんCDをご購入いただき感謝申し上げます。販売のお手間をおかけしてしまいましたこと、恐縮しております。

      夏は湿度温度が変わりやすく、調律師さんも大変そうでしたが、シュタイン、ヴァルターの2台も文化会館の舞台に立つことができ嬉しそうでした。貴重な機会を頂戴し、心から御礼申し上げます。
      酷暑に台風、、、どうぞお気を付けてお過ごしくださいませ。