シュタインとヴァルター

今月24日、東京文化会館で開催されます【日本モーツァルト愛好会第525回例会】に出演させていただきます。今回6度目の出演となります日本モーツァルト愛好会の例会は、フォルテピアノ2台を使ったレクチャーコンサートです。

これまで現代ピアノでモーツァルトを弾く際、表現に迷ったら、フォルテピアノに立ち返って6ミリの深さの鍵盤に触れ、コンコンと軽やかなハンマーを跳ね上げ、その繊細な音色に身を任せているうちに疑問が氷解したり、新たな発見があったり、弾けなかったパッサージュが楽になったりしてきました。

今回は、現代ピアノの傍で、これまでモーツァルトの音色を教えてくれたフォルテピアノの愛器2台を東京文化会館に運び入れます。この日「ミューズの神様」だけでなく「お天気の神様」にも恵まれますよう、心がけを良くして?!準備してまいります。

モーツァルトが活躍した18世紀後半は、鍵盤楽器の変遷の時期。それまで主に使われてきたチェンバロから、新しい鍵盤楽器として「フォルテピアノ」が躍進していきました。1777年、アウグスブルクのシュタインの工房から「シュタイン・ピアノ絶賛」の手紙をお父さん宛てに送ったモーツァルト。ウィーンで独り立ちしてからもヨーゼフ2世の御前でライヴァル、クレメンティと腕比べをした際に演奏しています。今回は、シュタインで《デュルニッツ》《きらきら星変奏曲》《ソナタK.331 》を弾かせていただきます。若きモーツァルトのはじけるような溌剌としたエネルギーの表現は、立ち上がりのいいシュタインの得意技。是非、音の飛翔を愉しんでいただきたいと思っています。

またモーツァルトがウィーンで結婚後、自ら購入したのは、ウィーンの楽器製作家アントン・ヴァルターのフォルテピアノでした。シュタインからさらに改良が加わったヴァルターの楽器は、2度打ちを防ぐ工夫も施され、繊細で柔らかな表現も可能となり、バスも深みのある響きとなりました。晩年の光と影の交錯は、このヴァルターあってこそ!と言えましょう。今回は、《ロンドイ短調K.511》《ソナタK.333の第3楽章》《ピアノ協奏曲第20番第2楽章ロマンツェ》《ソナタK.545》を演奏します。しっとりした響きを生で共有いただけましたら嬉しゅうございます。

モーツァルトをお好きな皆様のご来場をお待ちしております。

コメント