記憶の中のM君

神戸・松方ホールでの本番を終えた翌朝、モカマタリを丁寧に淹れて目を覚まし、新幹線で東京に向かい、大学に直行。
新幹線から見える富士山、浜名湖、熱海の風景で一機にリフレッシュ。無事、入学試験審査会場に到着しました。

若き才能に出会えるのは、嬉しい瞬間です。大学の4年間、様々な学びを通じてさらに大きく羽ばたいてほしい、、、未来に向けての予感と期待で想像が膨らみます。
私自身も、少しでも役にたつ授業ができるよう頑張ろうと思いました。

夜は、突然の地震に驚愕。震源地の方々は、余震など、不安な夜を過ごされていることと思います。懇意にさせていただいている福島県人会浜通り会のメンバーの皆さんの顔が目に浮かびます。被害が広がりません事を祈るばかりです。

私の東京の事務所でも、本棚から古い手紙や過去のプログラムなどが降ってきて部屋が散乱しました。
その中に、若くして天国に旅立ったM君のデビューリサイタル(2014.1.26)のプログラム。。。胸が痛みました。
ショパンの「葬送」とラヴェルの「鏡」をメインにした意欲的なプログラム。音楽への情熱と想いを込め、凝りに凝った当日用プログラムを作成した時には、輝かしい未来を夢見ていたことでしょう。

ソリストコースのゼミ、彼のいた年の数名からなるグループは、中国からの留学生も交じり、個性的で優秀なメンバーが揃っていました。M君はその中でもリーダー格として仲間を牽引し、生き生きとしたアクティビティを見せ、初見でオーケストラ・スコアを弾き、即興、編曲もこなし、そのユニークな視点と分析力に感心したものです。

本棚から落ちた拍子に、プログラムに挟んであったM君からの礼状が出てきました。
「・・・いつか久元先生のように、オーケストラをバックに、協奏曲を、しかも自作のカデンツァで!というような夢を叶えられるよう、今後とも精進して参ります。」

記憶の中のM君は、ピアノを夢中で弾き、優しい笑顔で仲間の演奏を聴いています。
そして彼の演奏は、今も仲間の心の中に生き続けています。

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