モーツァルティアン・フェライン設立40周年記念コンサート

うららかな早春の陽射しの中、代々木上原のムジカーザへ。ベーゼンドルファーのビンテージピアノ常設のサロンです。

マリステッラさんは、すっかり日本の空気にも慣れて、さらに元気いっぱい。

前半はモーツァルトソナタ3曲(KV301.304.526)を続けて演奏。普通、曲間で舞台袖に戻り水を飲むとか、一息つくものですが、一切、仕切り直し無し。3曲のソナタを続ける精神力と集中力は、流石。自然な調性の変化で、ト長調、ホ短調、イ長調のソナタが、全体で一つの大きな流れになりました。

「弾く」ことが日常になっているのは、音楽一家に生まれ幼少期から訓練を受けてきている賜物。楽屋のアップライトピアノで、私が指ならしをしていると、隣の楽屋からそれに合わせて歌ったり、練習の合間にワルツを弾くとドリアンを抱っこしながら踊ったり、、、。音楽大国イタリアのDNAを感じます。

後半はエルンストの無伴奏難曲を披露。テクニシャンのことをバリバリ弾く人、と比喩で表現しますが、彼女の場合、そのものズバリ、空気の壁をバリバリ打ち破るようなダイナミックさ。劇画のシーンを見ているようでした。
続けて十八番のサンサーンス《死の舞踏》。「息子のドリアンの一番のお気に入り」の曲だそう。生後5ヶ月で死神のダンスが大好きだなんて!シューベルトの《魔王》にも怯えない子供になりそう。。。

最後はブラームスの3番ソナタ。男性顔負けのパワーで押し切ります。アンコールに、マスネー《タイスの瞑想曲》、パガニーニ《カプリス》、エルガー《愛の挨拶》。

いったんステージに出たら、一度も休まず集中力を切らさない。しかも今回驚いたのは、一度も曲間で「調弦」をしなかったことです。激しい曲の後で、いくらなんでも弦の音程を合わせ直すだろうと、鍵盤のAに手を置くと「要らない、要らない」と首を横にふります。

以前、あるチェリストがコンサートで楽章ごとに毎回ギーギー大きな音で調弦し、しまいにはウンザリしてしまったことがありますが、途中で一度も調弦しない人には初めて会いました。

よほど狂わない丈夫な楽器を使っているのか、微調整より音楽の推進力を優先させているのか、いつかワインでも飲みながら、ゆっくり聞いてみようと思います。

山田副会長さんから、会場の皆様へお土産のチョコレートが渡されてコンサートが終了しました。

ハードなプログラムにお付き合いくださったご来場の皆様、お世話になりましたモーツァルティアンフェラインの皆様、ありがとうございました。

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