マリステッラ来日

スイスからヴァイオリニストのマリステラ・パトゥツィさんが、モーツァルティアンフェライン設立40周年記念コンサート出演のために来日。

彼女にとって2度目の日本。コンサート前々日に来て、前日に合わせ練習、コンサートの翌日に帰国、という弾丸スケジュールは前回と同じですが、今回はさらに生後5カ月の息子ドリアンちゃんと一緒の来日。

フライト直後、時差ぼけで少し目が赤いこと以外、元気いっぱいのマリステラさん。ドリアンが泣けば走り寄り、抱きしめてあやして寝かしつけて、また戻って合わせ。「母」のエネルギーと愛の深さに脱帽です。

音楽は積極的で時にアグレッシヴ。モーツァルトにはちょっと重すぎ?という時もありますが、情熱的なブラームスの迫力は胸に迫るものがあり、悪魔的な小品などには、ピタッとはまります。

「私は2月14日のバレンタインデーに生まれたせいかロマンティック人間なの。モーツァルトはエレガント過ぎて苦手。ロマン派が一番好き!」と言うマリステラ。イタリア人でスイス在住、アメリカで学んだ彼女は、自分を客観的に評価できる女性でもあります。ヴィヴァルディ音楽院出身ということもありバロックの演奏機会も多いそうですが、古典が最も難しいと感じているそう。「この曲はよくわかっていないので、アドバイスどんどんしてほしい」という素直すぎるほどの謙虚さと、「この曲はどうしてもこのテンポで弾きたい」という強い自己主張の両面があり、合わせ練習はとても楽しい時間でした。

以前、ベルリンカルテットとの共演の時、チェロ奏者の女性が乳飲み子同伴。他の男性メンバーもいる楽屋で堂々と授乳を始め、唖然としたことがありますが、今回もホールロビーで誰はばかることなく授乳タイムに入る大らかなマリステラ。鍵がかかる授乳室があったり、授乳の際カバーすることができる上着などを着用する日本女性の慎ましさとは対極にあり、文化の違いを感じました。

子供の頃からバレーを習っていたという彼女。ダンサーのように身体を使いながらのダイナミックな演奏スタイル。
去年の夏、妊娠とコロナ、両方の陽性がわかり驚いたそう。その後、妊娠中も自転車に乗って移動していたら転んで大怪我をしたとか。腕の負傷でしばらくヴァイオリンを弾けなかったが、お腹のドリアンは全然平気だったと笑う豪快さ。

ハードスケジュールも想定外の妊娠も、持前の明るさとポジティヴな精神で前進のエネルギーに変えていく彼女の逞しさに感服の一日でした。

練習後、マリステラさんとドリアンちゃんを囲んで。
今週は千客万来(笑)、楽器の配置換えの毎日でした。

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