音楽総合力UPワークショップ2023

PTNAメディア委員として音楽総合力ワークショップの企画会議に参加させていただいて数年になります。大学出講日に重なり、ほとんどリアルタイムの参加はできないのが残念ですが、ピアノ以外の音楽家や音楽以外の分野のスペシャリストからもお話を伺い、音楽家として幅を広げよう!という目的のもと、毎月ゲストをお呼びしています。

今日は日本を代表するサクソフォーン奏者の雲井雅人先生の回。

先月私の演奏会「ヴァルターとシュタインの弾き比べ」にお忙しい中いらしてくださり「コンセプトがまとまってきた!」と仰ってくださった雲井先生。19世紀、20世紀、21世紀と三世代の楽器とともに登場くださり、” サクソフォーンの歴史と演奏の実際” というタイトルのもと、濃密な演奏とお話を披露してくださいました。

伴奏者としてご指名いただき、共演させていただけたことは光栄の至り。個性の異なる3本のサックスの魅力を間近に感じ、美音に包まれたひとときに感謝です。

《アルルの女》から「前奏曲」「間奏曲」は、1870年頃の楽器で演奏することで、弱き存在の儚さと心の叫びが聴こえてきました。
《展覧会の絵》はラヴェル編曲初演が1922年。その頃の楽器からは、「古城」の哀しみと侘しさと独特の味わいが伝わります。

「久元さんが合わせの合間に弾いてくれたチェンバロやクラヴィコードの演奏からインスピレーションをもらった」との有難い前置きで、バッハの「ゴールドベルク変奏曲」のアリアを演奏してくださったり、歴史的サックスの魅力をご紹介くださいました。
細いけれど芯があってはっきりと伝わる、それなのに温かい。。。歴史的ピアノに通じる世界でした。

「これまでカルテットを作っては壊し、作っては壊ししてきた。うまい人を4人集めてもうまくいかないのは、やり方や方向が異なったりすると、そういう違和感が気になってしまうから。でも今のカルテットは20年続いている。それは自分が教え込んだ弟子3人と組んだから。自分が40代の時、彼らは20代だった。逆に今では40代の彼らに注意されたりしてる。」と笑う雲井先生。音楽家としての幸福は、才能とお人柄の賜物と感じた次第です。

「自分も若い時は、上手く吹こうとか、大きな音で早く吹いてテクニックを見せようとしてたところがある。けれど演奏家として晩年になってきて、何か違うな、と思い始めた時、歴史的なサックスに出会った。そして今では、レパートリーも、吹きたいものを吹くという感じ。」と静かに語る雲井先生。

クープラン:タヴェルニーのミュゼット、クライスラー:才長けた貴婦人、ガブリエル・マリー:パディネ、コンベーユ:マルブロ。アンコールにドリゴ:セレナードなどをお洒落に、美しく、味わいをもって演奏してくださいました。

次回は、歴史的サックスを歴史的ピアノで伴奏させていただきたいと思っています。

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