白井光子招聘教授*声楽公開レッスン 

国立音大では、多くのマスタークラスや公開レッスンが行われています。先週は、コレペティートル小田井郁子先生がドイツから来日。オーケストラスタジオでホルンの作品を取り上げながら、伴奏者としての心得を伝授くださいました。

今日は、大学講堂小ホールで白井光子先生の公開レッスン。ソプラノ、バリトン、メゾ・ソプラノ、ソプラノの優秀な成績の4名の学部生、院生が舞台で1曲歌唱。曲目はシューマン:《私のバラ》《2人の擲弾兵》《松雪草》ベートーヴェン:《アデライーデ》。ドイツ・ロマンの表現に向け、それぞれ厳しいレッスンが行われました。

立ち位置、発声のテクニック、ディクション、音色、そして詩の内容の解釈まで、ズバズバと歯に衣着せぬ指摘が飛び続けます。「リート・デュオ」の先駆者として、カールスルーエ音大で教鞭を取っておられる先生は、ピアノ伴奏に対しても容赦ありません。「あなた、冷たい。その音では、歌は入れないわ。」「なんでそんなに手首上げたり下げたり動かすの?」等々。

でもどんなに厳しい言葉でも、その根底に歌への情熱と若い学生への愛があるため、学生は真剣そのものでついていきます。レッスンは3時間半ぶっ続け。その間、休憩も挟まず、水も飲まず・・・の集中力に脱帽です。

ピアノ伴奏を担当した4名のうち2名は、私のクラスの学生。私が歌の伴奏が大好き、というのがどうやら学生に伝染しているようで、声楽の友人とアンサンブルを組み、成果を出して、毎年、クラス内の誰かが伴奏者として出演しています。私は毎回客席でドキドキハラハラの連続ですが、ステージ上での音量バランスや音色について、白井先生から的確なご指摘をいただき、いい経験と自信になったように見受けられました。

白井先生は、長野県佐久市のご出身。自然に囲まれた生活の中で、想像力やファンタジーが育ったとインタビューで答えておられます。

ドイツリートを歌うということは、詩を読み解きその登場人物になりきること。恋人への愛を歌い上げているのか、命が尽きる前の兵士の強い思いを表現しているのか、春に咲く松雪草の気持ちに寄り添っているのか。。。自然でストレートな先生の言葉から、学生の歌唱がみるみる変わっていきます。感情が立ち現れ、ドラマが生まれ、表現力も増していきました。

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