3台のピアノでベートーヴェン

今日は、ピアノクリニックヨコヤマにおいて演奏会に出演させていただきました。
横山ペテロさんとの出会いは、イエルク・デームス先生の山荘。私達が練習している間も、デームス先生所蔵の膨大な楽器を次から次に調律しておられた姿が印象的でした。

朝は山下公園を少し散歩。お花が秋空に映えてとても綺麗でした。

大きなデームス先生の絵画が飾られたピアノ愛に満ちた空間に、大勢のお客様が入られ、ベートーヴェン:ピアノソナタ4曲を弾かせていただきました。

前半第1番と第5番は、エラール(1895年製)で。平行弦でフォルテピアノの敏感さを残した透明な響き!
後半第4番はブリュットナー(1905年製 創業50周年記念モデルジュビリー)で。いぶし銀のような深みのある音色でした。
そして最後の《悲愴》は新しいブリュットナーで。
アンコールで弾いたイタリア製タローネなども含めると全部で5台使わせて頂いたことになります。それぞれの個性の違いに向き合った贅沢な一日でした。

ペテロさんの調律は「語る調律」とでも表現すべき不思議な魅力を持っています。ピアノが存在感を持って語りだすようで、私自身は「弾く」というよりピアノの言葉に耳を傾ける、という感覚になってきました。

広がる音の波紋に耳を傾けてくださるお客様との近さは半端でありません。
ピアノの鍵盤のすぐ横はお客様なのです。それなのに、全く気にならない・・・。これは生まれて初めての経験でした。シューベルティアーデやショパンのサロンの絵が残っていて、ピアノに肘をついているサロンのお客様が描かれたりしていますが、その距離感に近いものがありました。

驚くべきことには、たくさんの子供達が本当に水を打ったように静かに聴いてくださったことです。ピアノを学ぶ子供さん達の集中力に感服!
普段からレッスン室にもブリュットナーが完備され、音楽教室としても多くの生徒さんが音楽を奏でる空間。活気が溢れ、生き生きと調律に取り組んでおられるスタッフの塩田さん、大森さんも心強いサポートをしてくださいます。前回お伺いした日に初めて、ペテロさんの美しい奥様と可愛いお嬢様にお会いできたのも嬉しかったです。

終演後、ペテロさん達と一緒に外に出ると外に美しい月が出ていました。
デームス先生の山荘で見た大きな月を思い出し、デームス先生がくださったご縁に、あらためて感謝しました。

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