プラハ室内歌劇場「魔笛」

プラハ室内歌劇場によるオペラ「魔笛」を、オーチャードに観に行きました。
指揮: マルティン・マージク(スロヴァキア国立歌劇場指揮者)
演出: マルティン・オタヴァ(プラハ国立歌劇場首席演出家)
管弦楽: プラハ室内歌劇場管弦楽団合唱: プラハ室内歌劇場合唱団

スロヴァキアの新鋭マルティン・マージクによる若々しい序曲が始まり、いやがうえにも、期待がふくらみます。
舞台は、エジプト風に設えられています。がっしりとした神木を中心に、両脇に仮面を配した柱。
舞台左右にシンメトリーに配置されたピラミッドは、シーンに応じて色を変え、舞台転換の役目も果たします。
左側にそのシンメトリーをくずすように、一本の棕櫚の木があり、そのグリーンの葉が、救いにも、息抜きにもなっています。
このオペラはパパゲーノがいなかったら、ずいぶんと息のつまるものになってしまうと思いますが、舞台の上でも、この木が、自然の息吹を表しているようで、救いになっていました。予想どおり、パパゲーノが悲観して、首をつろうとするアリアの場面にも使われていました。
横のシンメトリーの調和に加え、全体が天と地に二分される立体的な舞台。
そこに、ハーモニー(縦)とメロディ(横)を駆使したモーツァルトの魔法のような音楽が入り、三次元的に楽しめました。

夜の世界、昼の世界、
男と女、
天と地、

考えてみると、
この世は、二つの両極の世界でできあがり、その中で、人間は、悲しみ、喜び、愛や憎しみの思いを感じていきます。
ザラストロ役は、ロシアのボリショイ劇場からの客演のヴァチェスラフ・ポチャプスキー。
なかなかの迫力です。権威と慈愛に満ちたバスの声でした。
そして夜の女王役は、プラハ国立歌劇場のトップソリスト、ダグマル・ヴァニュカートヴァー
強く、冷酷で、激しいエキセントリックな夜の女王を見事に演じていました。

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その両極端の声の間で、揺れ動く、タミーノとパミーナは、けなげで、人間の弱さ、強さ、やさしさ、悲しさ、美しさを体現。
「おいしいワインと女の子がいたら、僕は幸せ」という正直で人間味あふれるパパゲーノの健康的な世界。
それにしてもモーツァルトのオペラは、何度みても、新しい発見があります。
至福の喜びを表現するときのヘ長調のハーモニー、権威をあらわすバロック時代的な付点音符のリズム、前に意識しなかったモチーフが聞こえてきたり、、、、聞くたびに、新しいオペラを見たような感じ

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