東京アカデミーオーケストラ第37回定期演奏会

昨年11月に第36回定期演奏会で共演させていただいた東京アカデミーオーケストラの定期演奏会にお邪魔しました。

毎回、プログラミングもプログラムノートもHPも凝っているTAO。
今回のコンセプトは、「四季の風景、街、田園、人」
前半のオネゲル、ピアソラ、そして後半は、ベートーヴェン「田園」というプロでした。

指揮者がいないということは、一人一人が「指揮者」の要素を持っていて、室内楽的なやりとりが魅力のオーケストラ。
そして30代中心というエネルギーも知性もあふれたメンバーが創り出す瑞々しい音楽は、スリリングです。

「田園」も、指揮者がいないせいか、あちこちで鳥が鳴いたり、木がざわめいたり、風が起こったり、水が流れたり、、、、という自然そのままの姿が舞台に現れたようで、とにかく新鮮でした。
いつも聴く3連符が風に聞こえたり、耳になじんだメロディが初めてきく旋律に聞こえたり、普段は意識にのぼらないパートが聞こえてきたりしました。
TAOの直球型ベートーヴェンは、聴いていて気持ち良く、こぎれいにまとまるベートーヴェンより、はるかに魅力があるように思えました。
たとえばクレッシェンドをかけるためにピアノに落としてから始める、という技を使わず、自然体で始め、クレッシェンドする結果、若さと力とノリでさらに大きな音に到達し、常識を越える音量まで行ってしまう。
ベートーヴェンもびっくりという音量かもしれませんが、これがまた魅力的で、ベートーヴェンは、もしかしてこういう冒険、はじける感性を狙っていたのかもしれない、と思った一瞬でした。

以下は、団長さんが書かれたノートです。

フランスの女流作曲家ナディア・ブーランジェ、リリ・ブーランジェ姉妹は、姉ナディアがピアソラを教え、妹リリがオネゲルに影響を与えた。このことは、ピアソラ、オネゲルがともにフランス=ヨーロッパの伝統を受け継いでいることを示す。バッハ、ベートーヴェンといったバロックや古典派の伝統をフランス文化を経由して受容したのであった。
ピアソラが生きたブエノスアイレスは「南米のパリ」と呼ばれ、フランス文化の濃厚な都市だが、ヨーロッパ各地からの移民や先住民系の人も同居する他民族文化の交差する港町である。オネゲルはチューリッヒ・ドイツ語を話すスイス人でありながらパリで活躍した。この汎ヨーロッパ的な二人が、四季や自然をどのように捉え、表現したのか。田園風景を生き生きと描写した音楽の先駆的作品であるベートーヴェンの田園とともに、四季の移り変わり、街の風景、都市の風景を描きながら、五月の風に乗せて世界を巡る旅。

第37回定期演奏会

the 37th regular concert

2010 5/23(日) 14:45開場 15:30開演予定

(15:00からロビーコンサート)

Philia hall(フィリアホール)

オネゲル 交響詩《夏の牧歌》

Arthur Honegger 《Pastorale d’Été》

ピアソラ《ブエノスアイレスの四季》

Astor Piazzolla (Arr.by Desyatnikov) 《Cuatro Estaciónes Porteñas》

ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」 Op68

Ludwig van Beethoven – Symphonie Nr. 6 F-Dur Opus 68 `Pastorale`

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