ロマン派室内楽の花

国立での本番を終え、3分で着替え。
五反田に急ぎ、「若きダーヴィト同盟主催」の第3回ロマン派音楽レクチャー・コンサートにお伺いしました。

残念ながら開演時刻には間に合わず、最初のクララ・ヴィーク・シューマンの演奏は、会場の外のモニターで拝聴。ピアノの東浦亜希子さんの美しい姿が映っていて会場にクララがいるような錯覚にとらわれました。
念入りに準備された知的な演奏で、シューマンのダーヴィト同盟舞曲集で博士論文を取られたというのもうなずけます。都立芸高、芸大の後輩の頑張る姿は頼もしい限り。次回はぜひ生でお聴きしたいと思いました。

続いて奈良希愛さん(ピアノ)、山本美樹子さん(ヴァイオリン)、森山亮介さん(チェロ)の演奏で、ヴォルデマル・バルギールのピアノトリオ1番の1~3楽章まで。
23歳のころの作品で、初めて聴く曲でしたが、五度下降の音型が印象的で、ロマンティックなハーモニーも美しく、このあとの4楽章はどうなるのか、ぜひ楽譜を見てみたいと思いました。
シューマンに献呈された曲ですが、当時人気を博したと伝えられています。

後半は、「シューマンのピアノ五重奏曲」。
藤本一子先生が、その作曲のプロセスについて詳細にお話しくださいました。
扉を開けるとそこに異次元の世界があるようなシューマンの音楽。
どういう作曲プロセスからそのような印象を与えるのかについて、図式も交えて語ってくださいました。
スケッチ、スコア、印刷底本、初版と、段階を追うごとに、挿入されたり、削られたりして、構想の原理そのものが変容していく過程は、大変興味深いものでした。
ベートーヴェンがワルトシュタイン・ソナタを試演したとき、友人の助言により、第2楽章をまったく別のものに変えましたが、シューマンのこの曲にも同じような経緯があるようです。
2度目の試演の際、クララの体調が悪く、メンデルスゾーンがピアノパートを弾いたとき、
「真ん中の部分は、もうすこし生き生きした音楽のほうが良いのでは、、?」
と助言。
シューマンはその意見を受け入れ、「情景」と題された43小節は外されて、前進するダイナミックな構造へと変わりました。
何度弾いても名曲だと感じるこの五重奏の秘密を垣間見せていただいたようで、有意義な時間でした。
ヴァイオリンの對馬哲男さんとヴィオラの脇屋小枝子さんが加わり、真摯な熱演30分。
健闘を讃える拍手にこたえて、アンコールにバルギールのクァルテットが演奏されました。

第4回「森の声」と題されたブラームスのクラリネット・トリオが11月22日、第5回の「ジャン・パウル生誕250年」が来年3月22日に予定されています。

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