シュタッツオーパー《フィガロの結婚》

ウィーンのピアノ専門誌ヴァインベルガーの取材を終え、ベトナム料理「サイゴン」で遅めのランチ。
雑貨屋さんで小物を買って外に出ると男の人が倒れていました。
「え~!大丈夫ですか!」
警察の人は、管轄外ということでそのまま行ってしまったらしいのですが、親切な若者が、救急車を呼び、無事、病院に搬送されたようでホッとしました。

古楽器博物館でクラヴィコードなどをつまびいたあと、ウィーン・シュタッツオーパーへ。
ジャン・ルイ・マルチノティによる新演出による《「フィガロの結婚》です。
フランツ・ヴェルザー・メストが颯爽と指揮台に上がると、大きな拍手。
地元の期待度の大きさを表すかのようです。

アンサンブルがときどきズレたり、歌手陣の動きがぎこちなかったりするのですが、おそらく回を重ねるごとに磨かれ、なじんでくるのが舞台というもの。
シルヴィエ・ド・セゴンザックの衣装は、オーソドックスで、舞台の品格を保っていましたし、斜めにゆがんだ四角形の枠の中で動く登場人物は、それぞれ4人の男女の心理をあらわしている、という演出と思われ、効果的な舞台でした。
モーツァルトのバイオグラフィー、ダ・ポンテのバイオグラフィーに始まる、丁寧な作りの当日用プログラムのトップページには、スザンナ役のシルビア・シュヴァルツの写真。
本日の注目!という扱いかもしれません。

ケルビーノは、「やんちゃもの」として登場することの多いキャラクターですが、今夜のケルビーノ(アンナ・ボニタティブス)は、繊細なデリカシー、不安定な思春期の脆さを表現していて、新鮮に思えました。
ただ、舞台に奥行を与えてくれるアルマヴィーヴァ伯爵の貫禄と伯爵夫人の気品が今ひとつ足りないのです。
そのせいか、皆が同じくらいの等身大の人物像となってしまって、舞台上の演出で奥行き感を出していても、キャラクターの違いが浮き立ってこないのが残念でした。

ザッハーホテルでターフェルシュピッツをいただき、ウィーン最後の晩を楽しみました。

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