続々カワイ講座・バッハ平均律

カワイの演奏法講座。今日は、バッハの平均律クラヴィーア曲集から、第1巻ハ長調、変ホ短調、そして、第2巻ニ長調をとりあげました。

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縦横に完璧に編まれている音宇宙、しかし、そこからは、祈りの声、嘆き、戸惑いなど人間の感情が浮かび上がってきます。
インヴェンションの冒頭で、バッハは、「正しく、清潔に、美しく、歌うような奏法」を求めていますが、それは、そのままほかの鍵盤曲にも当てはまるように思えます。
数年前、バッハの頭蓋骨が発見され、復元した頭部の写真が公表されました。
エネルギッシュで強い意志の持ち主、眼光が鋭く筋肉質の体型、という印象です。
オルガニストとしてのバッハ、カントールとしてのバッハ、作曲家としてのバッハ。

ピアノ弾きにとっては永遠に神様のような存在ですが、現代のピアノのために書いたわけではないバッハの曲が、なぜ、こんなにピアノ弾きにとってバイブルになりえるのか、子供のころは、よくわからないまま、毎日のお祈りのような気持ちで弾いていました。
その後、古典派、ロマン派、近代、現代の様々な曲を弾くようになって、バッハの作品のずば抜けた完成度の高さと内容の深さにあらためてひれ伏す気持ちが強まりました。
テクニックの面でもバッハを弾く意義は大きいと思います。
一つの声部を2つの手で弾き継ぐ、あるいは、2つの声部を一つの手で受け持つ。
ポリフォニックな作品のテクニック的な課題は、そのままピアノの技術の向上につながります。
音楽的な作品として書かれたバッハの曲が、どんなエチュードよりもテクニックの進歩につながるわけです。

今日は、それらポリフォニックな作品を弾く際の留意点や曲の構造、フーガの技法などを、どのように表現していくかについてのお話を交えながら弾かせていただきました。
シューマンはこう言っています。
「技術が習得できてきてもまだスケールなどの基本練習のために一日何時間も費やすのは、ABCをすらすら言うために練習し続けるのと同じくらい、意味のないことだ。バッハの平均律を毎日の糧とすれば、必ず素晴らしい音楽家になれるだろう」

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