諏訪でリサイタル

諏訪市音楽協会主催で、リサイタルを開催させていただきました。
1829年製ベーゼンドルファー、東京に先駆けてのお披露目です。
前日からホールへ搬入。
こまかな調整が続きます。
ホールのベーゼンドルファー・インペリアルは、長年、この楽器をメンテナンスされてこられた津田克巳さん。
1829年製のインペリアルは、この楽器を修復された小野哲さん。
お二人の調律師魂に支えていただきながら、この無謀な計画を無事終えることができました。
鍵盤の幅も深さもまるで違う2台の楽器。
音色も音量も、183年という歳月を経て、いかに世界が変わったかを如実に物語ってくれます。

数日前、練習のとき、蝋燭の光だけで、この2台を演奏しました。
小さい、儚いと思っていた1829年製ベーゼンドルファーの音が大きく感じられて驚きました。
ピアニシモへの感度、音量へのセンシティビティがはるかに増すのです。
月明かりの中で行う夜中の茶事、パリのサロンで灯りを落とした中で演奏したショパンのノクターン。
いずれにせよ、蛍光灯やLEDの光では感じることができない光と影が生まれ、ゆらめきや変化に敏感になります。
そんな練習も経ての本番でしたが、曲が進むごとに、お客様との距離感が縮まり、親密な空間に変容していくように思えました。

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ベーゼンドルファーのファンという方も遠くからいらしてくださったり、ありがたいひとときでした。

打ち上げでは、閉鎖になってしまった駅前のデパートがすごく良かった・・・とか
諏訪湖の花火の話、諏訪湖を綺麗にするために、人知れず毎朝ごみの籠をしょっておられる某会社幹部の方のお話など、じーんとしたり、懐かしかったり、というお話の連続でした。

え~?!そんなことって・・・おもしろすぎ!というエピソードを1つ。
茅野にご親戚がおられる東京の方のお話です。そのご親戚の方が毎年野菜を送ってくださるのだそうですが、その野菜が包まれていた新聞に、今日のコンサートの記事が載っていたのだそうです。記事を読み、問い合わせてくださり、聴きにいらして下さったとか。
私の顔は長野の野菜と一緒に東京に運ばれていたというわけです。
新聞の威力と不思議なご縁を感じました。

福島で震災に合われ、現在諏訪にお住まいの方、さまざまな土地に転勤されて諏訪が一番好き!ということで定住されたスタッフの方などなど、聴いてくださる方みなさんにそれぞれの生活があり、限られた時間の中でひとときを共有してくださったということをあらためて感じました。

新聞社のフォトセッションのために、後半の冒頭が使われるのも、和気藹々とした諏訪ならでは。
お客様、そして1829年製ベーゼンドルファー(と私?!)をカメラに収めるのに5分。

後半は、時代を現代に移し、インペリアルの豊かな響きを聴いていただきました。
お世話になりました諏訪市音楽協会の皆様、暑い一日、会場にいらしてくださいましたお客様に心から御礼申し上げます。

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