民音音楽博物館

学生時代から、資料集めや研究の際、芸大の図書館以外にも、上野の 東京文化会館資料館民音音楽博物館 にはお世話になってきました。

この10年ほどは、調べものは、国立音大図書館と楽器学資料館が多く、東京文化会館資料館民音音楽博物館 には、ご無沙汰だったのですが、今日は、久しぶりに、民音音楽博物館 にお邪魔させていただきました。
私が学生時代通っていた頃は、「民音」は、大久保のあたりにありましたが、信濃町にお引越しになってからは、初めて。
綺麗なビルをわくわくしながら、入った次第です。

オリジナル楽器の保存、という面では、各博物館によって、大きな違いがあるかと思います。
保存と公開のどちらを大事にするのか、という問題です。

すべての楽器を大事に保存すれば、痛むこともありませんし、調整の手間もありません。
でも楽器は、音を奏で音楽を創造する役目をもって生まれてきたわけで、音を出さないまましまっておかれる・・・というのは、楽器本来の目的からは、はずれてしまい、楽器を「生かしている」とは言えません。

民音音楽博物館 では、一日数回、来場者の方々に、ミニコンサートを開催し、それぞれの楽器を音として披露しておられ、それぞれの時代の音色を楽しむことができるように、というコンセプトで運営されています。

1795年製のアントン・ワルターは、微細な変化ができ、透明感と軽やかさと歌心を持った音色でした。
1580年頃に制作された、イタリアン・チェンバロ、1800年のヨハン・フリッツ、1845年のプレイエルなど貴重なコレクションが整然と並んでいます。

数年前、イエルク・デームス先生のザルツブルク近郊にあるガーベルクの山荘で弾かせていただいた、白い1899年製エラールが古典楽器室の一番右に置かれていました。
「もうすぐ民音にお嫁入り」
と、おっしゃっていた直前でしたので、
「日本に帰ったらエラールに会いに行きましょう」と思いつつ、何年もたってしまっていました。
そのエラールを見たとたん、ひんやりとした山の空気、「静寂を学んで帰るように」とおっしゃっていたデームス先生の言葉や、真っ暗な空に浮かび上がる満点の月夜の美しさが蘇りました。

ウィーンの三羽烏のデームス先生は、フランス贔屓の方でもあり、ドビュッシーをこよなく愛し、フランス語も堪能なピアニストでもあります。
そのエラールの「月の光」を聴きながら、ガーベルクの月を想い出しました。

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