世界の楽器たち

国立音大には、充実した楽器博物館があり、楽器の講座も行われています。今年のテーマは「世界の民族楽器」。
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どうしても18世紀以降の鍵盤楽器に興味が集中してしまう私なのですが、こういう機会に世界の様々な楽器を知ろうと思い、水曜日は、お昼ご飯を手早く済ませて講座が行われている地下の部屋に向かっています。先週の講座は、「バグパイプ」でした。演奏している姿を映像で見たりしたことはありますが、楽器自体に触れたのは初めて。とてつもなく重く、持つだけでも大変なのに、袋(バッグ)に空気をためるのはさらに一苦労。スカートをはいた男性たちが、こんなにすごい肺活量と体力の持ち主であったなんて!と驚きました。
そして、今日は「ダマル」という楽器の紹介。「チベットの神聖な楽器です」というアナウンスとともに始まった講座。まさに驚愕の楽器でした。「ダマル」は、チベット仏教などで用いられる「ふりつづみ」の一種。デンデン太鼓のように振りながら音を出す仕組みで、人の頭蓋骨から作られています。亡くなった人を自然に返すという「鳥葬」の風習、そして骨を楽器に使うという文化。私達には考えられないことですし、見たことはもちろん、そのような楽器を想像したこともありませんでした。
またチベットの民族楽器カンリン(人骨笛)は、大腿骨から作られています。髄の部分が空洞になり、そこに息を吹きかけて音を出す楽器です。その際、悪人の骨を使うのだとか。なぜなら人は生まれながらに「善」である、という考え方から、この世にいるとき悪事をした人は、骨に「善」が残っていると信じられているからだそうです。葬礼の際、カンリンを死者に向かって吹き鳴らし、「善」なるパワーを吹きかける大切な役割を持っている楽器、とのこと。
これらの楽器は、普段、楽器学資料館のガラスケースに入っています。この10年間、ピアノ・プロジェクトで資料館には何度も足を運んでいますが、広い資料館の中の一角、気にかけたこともありませんでした。そして資料館員さんによるとこのダマルの入ったガラスケースは、他の展示ケースに比べ、開きにくいのだとか。もしかしたら霊の力が働いているのかもしれません。
世界の楽器からは、文化、宗教、哲学、歴史、様々なものが見えてきます。時空を超えて神秘と想像の世界に飛翔する10分間でした。
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楽器10分講座は毎週水、金の12時40分から国立音大1号館B26で行われています。また2017年4月は楽器学資料館がリニューアルオープンします。ぜひ足を運んでみてください。

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