池内紀先生の「亡き人へのレクイエム」を拝読しました。
写真も題字も挿絵も池内先生によるものです。
「惜しみても惜しみてもあまりある三津五郎の死」
「あきらかにあるべき未来の女性を先取りしていた」米原万里さん
「おそろしくまっとうに生き、あざやかに身を消した」高峰秀子さん・・・ら
池内先生により選ばれた28人への鎮魂歌。
個性も仕事もさまざまに違うけれど、徒党を組むのをいさぎよしとしなかった人々が先生の「守護天使」として生き生きと描かれています。「言葉はすでに遠くへ往ってしまった人を近くに引き寄せることができる。」と先生は語られます。
そして同時に、魅力ある人々へ寄り添い、ペンによる肖像画を描かれる池内先生ご自身の息遣いが行間から伝わってきます。
この本を読んでいて、ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」の中の『カタコンブ』の響きが心に浮かびました。ムソルグスキーが若くして亡くなった親友の画家ガルトマンを音で追悼した曲で、~死者とともに死者の言葉をもって~とサブタイトルがつけられています。「ガルトマンの創造的精神が私の頭蓋骨に働きかけ、私の魂もやがて輝きだす・・・」とムソルグスキーは楽譜に記しました。
「遠方の思想が、いきいきと心にしみてくる。死者からのこの上ない贈り物だ。」と綴られる池内先生は、テレビもコンピュータとも無縁の静かな時間を過ごされる中で、死者からのメッセージを受け取り、深く見つめ、人生について静かに言葉にされておられるかのようです。
レクイエムの最後に、「死」についての珠玉のエッセーが添えられています。
立ち止まることなく、ひたすら毎日を生きている自分を顧みながら、久しぶりに先生にお手紙を書きました。
コメント