フォルテピアノリサイタル@西方音楽館

6月25日、西方音楽館 木洩れ陽ホールにて、フォルテピアノ演奏会に出演させていただきました。
モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会シリーズvol.2となります。

今日弾かせていただいたのは、クリストファー・クラーク氏により1994年に制作されたA.ヴァルター1795年モデルのフォルテピアノです。この楽器は、フォルテピアノ奏者、故小島芳子さん愛用の楽器でした。
昨日リハーサルにお伺いし、まずその美しい繊細な音色に驚愕。細やかな表現に寄り添い、応えてくれるのです。他のヴァルターモデルではできないことができてしまう瞬間、そこに確かな「名器の力」を指先から感じました。

小島先生Fp

洗練された装飾が施され、佇まいも上品そのもの。勇ましい「トルコ行進曲」を弾いてもどこか優雅なのです。
小さな手でいらした小島さんのリクエストで、鍵盤の幅はほんの少し狭くなっています。
小島さんのために制作された特注の楽器は、ドレスで言えばオートクチュール。ほかの誰よりも小島さんに相応しい楽器と言えましょう。可憐な小島さんが43歳
の若さで天国に召されたのが2004年5月のこと。小島さんご自身、そしてご家族も、どんなにか無念でいらしたことでしょう。もし神様のもとに旅立たなければ、このクラーク氏の楽器とともに今も大活躍さ
れていたに違いありません。

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小島さんの魂が入った楽器を前に、私などが弾かせていただいてよいのでしょうか・・・という思いがあふれ、胸が詰まってしまいました。

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今日の演奏会では、プログラムの前に、小島さんの御霊に安らかなご冥福をお祈りし、バッハの前奏曲を弾かせていただきました。

制作者である巨匠クラーク氏、楽器の調整、調律をされてこられたご主人の福沢宏さん、そしてずば抜けた才能の奏者、小島芳子さん・・・この黄金の関係から生まれた数々の演奏は、今も多くのファンの心に残り続けています。

今日は、「きらきら星変奏曲」など小島さんが録音された曲も演奏しました。
西方音楽館友の会の皆様とも回を重ねる中で、親しくさせていただいてきています。木のぬくもりと落ち着いた空間の中で静かに、そして豊かにフォルテピアノの音が響き渡りました。

たくさんの音色の引き出しを持ち、豊かなファンタジーに満ちた楽器から多くのことを学ばせていただいた一日でした。

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