オペラコース 大学院FD

国立音大では、各専攻ごとに毎年FD(Faculty Development)が行なわれています。今日は、大学院声楽専攻オペラコースの公開研究授業に伺いました。
来週の大学院オペラ公演に向けてモーツァルト:ドン・ジョバンニの仕上げの授業を拝見しました。
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新校舎内のオペラスタジオの舞台で、指揮の秋山和慶先生、演出の中村敬一先生の厳しい指導のもと、見事に鍛えられていく出演者たち。なんと恵まれた教育環境でしょう!
この舞台には、院生だけでなくすでに若手声楽家として活躍している卒業生も助演としてメンバーに加わっています。
授業と言っても公演に向けての「仕込み中」であり「途中段階」であることに変わりなく、最も他人に見られたくない時間に違いありません。
たくさんの先生に混じってそっと透明人間のように存在を隠していようと思ったのですが、なんと聴講教諭は私ひとり、、、。しっかり見つかってしまいました。ドン・ジョバンニ役の近藤圭さんはじめキャストの皆さん、ごめんなさい!
けれど、ハリのある若々しい声とこれまで積み重ねてこられた技術を武器に、果敢に、そして丁寧に役作りに立ち向かう情熱に大拍手!でした。
それを支える一流のマエストロ、演出家、教諭陣、スタッフの方々。オペラという大きなプロダクションを通じて、くにたちのアンサンブルの素晴らしさを実感する時間となりました。
マエストロ、秋山先生の「”間”が足りない!」の指摘、中村先生の「子音の破裂音が聞こえてこない!paと言う前に空気をためてから!ブレスが足りない!」と妥協のないコーチングが続きます。
岩森美里先生が具体的な練習方法(母音を変化させながら破裂音を反復)を指導され、舞台では0.1秒で過ぎてしまうであろう「pa」のために、アドバイスと磨き上げが続きます。
お客様の心を動かす視線、動線、仕草など細やかな演技指導を間近で拝見し、なるほど!と感じ入りました。
こうしたディテールの積み重ねが、クオリティの高い舞台に繋がっているのでしょう。
オペラ歌手への道を歩み始めた彼らにとって、アンサンブル、演技、発音、発声の基礎を徹底的に学び、半年かけて1つの演目を丁寧に紡いでいく過程は、将来の大きな糧になるに違いありません。
“院オペ”からデビューし、海外経験を積み、日本のトップスターとしてオペラ界を牽引していく素晴らしい人材が次々に輩出されていく「くにたち」の良き伝統を垣間見せていただきました。
「平板だ!」の指摘に、ソプラノの大倉由紀枝先生が「上手く歌ってるけれど、それじゃ伝わらないのよ。響きが足りない! 頭蓋骨のここを使って、、、」と、歌って見本を示された途端、スタジオの空気が変わり、鳥肌がたつような波動が!
懸命に学ぶエルヴィーラが、的確な導きによって、”複雑な想いを秘めた女性”に変身する瞬間でした。
ピアノで言うと「棒弾きにならないためにはどうするのか」に相当する指導です。そしてオーケストラの前奏、レチタティーヴォ、アリア、重唱を一人で演じる”ピアノ弾き”にとっても大変勉強になるFDでした。
公演は、来週15日と16日です。是非お出かけください!
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