愛しい五月よお前はまたやってきた

ジューンベリーも花をつけ、新緑が目に眩しい5月。
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5月の爽やかな風は頬に心地よく、シューマンの「子供のためのアルバム」の中の1曲、「愛しい五月よお前はまたやってきた」をつま弾きたくなる季節です。ドイツでは、5月のある一日を境に春の花がいっせいに咲き始め、鳥が鳴き、美しい季節の訪れを皆に知らせます。ドイツ・リートの世界は、5月に恋が芽生え、冬に失恋というパターンがほとんど。この逆ということはまずありません。生きる喜びと愛の悦びにあふれた季節というイメージなのでしょう。
先日の国立音大楽器学資料館のリニューアル・オープンでは、グラーフ・ピアノ1839年製(複製)でシューマンを弾きました。シューマン夫妻が愛用したピアノと同型です。弱音ペダルが3種類ついており、シューマンにおける夢のような弱音表現を可能にする楽器と言えましょう。トロイメライでは、3種類すべての弱音ペダルを順に使い、最後に夢の中に消えてゆくような響きを目指しました。
シューマンは1840年、30歳でクララと結婚しますが、結婚式の前夜、このグラーフ・ピアノに、清純な花嫁を象徴するミルテの花を飾り、歌曲集≪ミルテの花≫を新妻に捧げました。花嫁の父であり、自分の師匠であるヴィーク先生との長年の確執、困難に打ち勝ち愛を実らせることができた喜びが、この曲には溢れています。
このグラーフは、オープンキャンパス(5月28日)や楽器学資料館開館日(水曜日)にご覧いただくことができます。
また、6月4日神戸ポートピアホールで開催予定の神戸国際フルートコンクール祝賀記念ガラ・コンサートでは、≪ミルテの花≫第1曲「献呈」を、音楽への情熱溢れる参加者の皆様に献げたいと思っています。

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