小さなミス 大きなミス

ミスタッチを恐れても恐れなくても外すときは外れてしまうのだから、ミスを恐れてびくびくした演奏をするな!と師匠から言われたことがあります。たしかにコンピュータと違い、人間がパーフェクトという可能性はゼロに限りなく近いと言えるでしょう。のびのびとしたパフォーマンスを行い、その結果、ノーミスであればさらに素晴らしい!

遊ぶような自然な姿で、見事な演奏を奏で、ミス一つない巨匠たちの演奏には、心から脱帽します。

スキー、スケート、テニス、サッカー・・・などスポーツを見ていても「完璧!」と叫びたくなるような鮮やかなパフォーマンスに出会うことがあります。日本人選手の活躍にも目を見張ることの多い昨今ですが、スポーツ科学、スポーツ医学などの進歩も大きな理由のひとつなのでしょう。

演奏の分野でも脳科学、スポーツ科学が生かされるようになり、飛躍的にテクニックの進歩がもたらされてきたように思います。スーパーチャイルドの登場には驚くばかりです。

さて、このひと月、試験、コンクールなど演奏に対して「数字」や「順位」を決めなければならない審査員という立場で聴かせていただく日々が続きました。活躍している若手スポーツ選手と同世代の”音楽選手”たちです。結果が公正に数字で出るスポーツや試合に比べ、音楽を点数にするなんておこがましいことをしたくない、と常々思っていますし、点数をつけることの難しさを痛感する季節です。

今年も、卒業試験では、ミスやアラが目立つ古典より、派手な近現代のレパートリーに人気が集中しました。選曲も高得点を出すための第一歩と言えるのかもしれません。

様々な演奏を立て続けに聴けば聴くほど、ミスをしないつまらない演奏より、小さなミスをしても面白い生き生きした演奏を求める気持ちが強くなったひと月でもありました。

けれど、決して許されないミスというものも世の中にはたくさんあることも事実。

テレビで聞いた「受験票送付が期日までに届かなかった発送ミス」「合格と不合格を逆に送付してしまったミス」などのニュースには唖然。人生を賭けた真剣勝負に挑む受験生に対してはどんな小さなミスも許されません。ましてやそんな大きなミスが起きてしまうことがあるなんて。。。

受験生たちの心中はいかばかりだったでしょう。驚きを通り越して腹立ちが・・・。

わが国音でも「ミスが許されない受験シーズン、試験シーズン」が無事終わり、ほっとしているところです。

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