ショパンが日本人に愛される理由

セレモアコンサートホール武蔵野におきまして、立川法人会砂川東支部女性部会主催のレクチャーコンサートに出演させていただきました。使用ピアノは、プレイエル1843年製。タイトルは「ショパンが日本人に愛される理由」。

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今日は、すっきりしない曇り空。まさに「ショパン日和」でした。
美しい旋律に隠された鬱々とした気分や喪失感、溜息や悲しみ・・・。
ショパンの音楽は、決してカラッと晴れ渡った空という雰囲気ではないからです。

そして、色や香りの微妙な違いを感じとる繊細な感性、潔く散りゆく桜を愛で、滅びの美学に共感する精神、粋と洗練を愛する心など、時代と国を超え、ショパンが日本で愛される理由にもアプローチしました。

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プレイエル制作の楽器は、くぐもった柔らかな音色を持ち、独特の香りと色を体現してくれるピアノです。渦巻くような情念、非現実の香り、プレイエルの持つ不思議な力をピアノの詩人ショパンは愛していたのでしょう。

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奏者の息遣いの伝わる距離感で弾かせていただくうちに、その波動が聴いてくださる方に伝わっていきました。「昇天しそうでした。」「胸がいっぱいで、息が詰まって危なかったです。」「涙が止まらなくなってしまった」など、あとでメールをくださる方もいらっしゃり、ショパンの音楽の持つ魅力と楽器の力に感謝。

ショパン・プログラムの合間には、ショパンが敬愛したバッハやモーツァルトの小品をクラヴィコードやチェンバロで演奏。そしてショパンの書き込みが残されたバッハの楽譜ファクシミリを展示しながら、バッハの「前奏曲」をプレイエルで弾かせていただきました。

プレイエルは、弦が平行に張られているため、音の透明感に優れています。そしてダンパーがフワリと落ちてくるので、歌うような柔らかな音色で、静謐な祈りの音楽に寄り添ってくれるのです。プレイエルにバッハが合う・・・これは新しい発見でした。

バッハの平均律クラヴィーア曲集の楽譜に残されたたショパンの筆跡は美しく細く、巨匠への畏敬の念にあふれています。アクセントやデュナーミク記号、そして「消えるように」などの表情記号が、控えめにそっと書かれています。ショパンが生まれる60年前にこの世を去ったバッハ。その先人への尊敬から「24の前奏曲集」が生まれています。

いずれにしましても、楽器、楽譜が教えてくれることの大きさをあらためて感じた一日でした。

ところで、先日放映された金曜ロードショー「ルパン三世」では、プレイエルとショパンの曲が事件解決の大きな鍵になっていました。制作段階で取材協力させていただきましたので、テロップに私の名前も出ており、それをご覧になって、コンサートにいらしてくださった方もおられました。

数カ月前に行われた取材では、私がプレイエルを弾いている場面を撮影したり、プレイエルの採寸をしたり、コンテに起こすための作業が綿密に行われましたが、放映場面では、私の顔も姿も「不二子さん」に変わっていたことは言うまでもありません(笑)。

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