岡山潔先生に捧ぐ

「ジュナミ」の第2楽章はハ短調で書かれています。モーツァルトがピアノ協奏曲の第2楽章に短調をもってきた最初の作品。それより前に作られた「綺麗で快活な」作品群とは一線を画しています。

その劇的な音符のひとつひとつは、オペラのレチタティーボのよう。そしてプレストの第3楽章の終盤、突然下属調(変イ長調)のドミナントのアルペジオを合図に現れる優雅なメヌエット。
21歳のモーツァルトの驚異的な天才を感じる名曲です。

この曲をオーケストラと演奏するたびに、スリルと闘う自分と響きに身をゆだねる愉悦のベクトルが揺れ続け、回転していくような感覚になります。

1981年設立された神戸市室内管弦楽団は、1998年にゲルハルト・ボッセ先生を音楽監督に迎え発展。そして理念を引き継がれた故岡山潔先生のご尽力により、歴史が守られてきたアンサンブルです。

私が共演させていただいたのは、20年ほど前。岩淵龍太郎先生のタクトで第20番のコンチェルトでした。20代の若いときにモーツァルト円熟期の名曲を共演。そして年齢を経て、モーツァルト若き日のエネルギッシュな作品を共演。。。という不思議なめぐり合わせです。20年前にご一緒したメンバーの田中さんも声をかけてくださり、懐かしい再会となりました。

今回の共演は、私にとり、2018年10月1日、天国に旅立たれた岡山潔先生への献奏でもありました。
2013年に松方ホールで、岡山潔先生と奥様の芳子先生によるバッハとモーツァルトののデュオコンチェルトの演奏会を拝聴した日のことが蘇りました。そして岡山潔先生のお別れ会がご自宅の玉川学園にあるスタジオ・コンチェルティーノで行われ、そこに全国から集まったたくさんのお弟子さんや楽友の方たちの涙も忘れられません。

終演後、楽屋をお訪ねくださった芳子先生、そしてミュージックアドバイザーの菅野ボッセ美智子先生お二人のお顔を見て胸がいっぱいになりました。

岡山先生の薫陶を受けたメンバーの皆さんのアンサンブルの力とともに、神戸市室内管弦楽団が今後さらに発展していきますことを心から願っています。

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