モーツァルトKV310@新宿

今年も残すところわずかとなりました。

来秋開催予定のモーツァルト・ピアノ・ソナタ全曲シリーズvol.4で取り上げるKV310、 KV311についてのプレ講座を朝日カルチャーセンター新宿で2回に亘って行わせていただくことになり、まずはKV310 イ短調を取り上げました。年の瀬にも拘わらず、日本モーツァルト愛好会の会員の皆様はじめ、多くのモーツァルト愛好家、演奏家の方がおでかけくさいまして、ありがとうございました。

青春の旅路の中から生まれたこのソナタの特異な雰囲気には、弾くたびにいつも驚かされます。22歳のモーツァルトがパリで母を失う悲劇に直面し、その挫折と試練が、人間的成長と音楽的進歩に繋がりドラマティックな名曲に結実したように感じます。また、パリで新しいフォルテピアノに出会った可能性もあり、それまでの作品とは一線を画した語法を用いています。

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大学での授業、ピアノの先生方を対象とした講座では、「弾くため」か「レッスンのため」かニーズがはっきりしています。ところが、社会人の皆様のための講座で、今回のように「弾きたい、聴きたいモーツァルト」と銘打った講座になりますと、かなりお詳しいマニュアックな愛好家の方もいらっしゃれば、趣味でピアノを練習しておられる方もおられ、またコンサートやコンクールの準備中という方もいらっしゃいます。

90分で、「弾く人」にも「聴く人」にも何かしら得るものがあったと思っていただくのは難しいと思い、当初はお引き受けするのを躊躇いました。けれど専門用語を使わずわかりやすくお話しすることを心がけながらも、奏者としての想い、弾き手としてのアプローチを正直にぶつけることで、「面白い」と思っていただけるようです。

もともと、演奏家がお話と演奏両方を行うスタイルは、朝日新聞社主催のレクチャー・コンサート・シリーズ(浜離宮朝日ホール)が始まりでした。たしか、京都の有名なご住職の講演と私のレクチャーコンサートを交互に開催してくださったように記憶しています。私がまだ若く、細い?!うん十年も前のことです。当時、そんなことはかなり常識破りなことで「演奏者は演奏に専念すべき!」というご批判も受けたのですが、今やたくさんの演奏家の方が当たり前のようにお話をされるようになりました。

お話を交えてのコンサートの数は増えていますが、私自身、個展とも言える「自主リサイタル」のときには「演奏」のみで表現したい、という原点を貫いています。

いずれにしましても、今年一年、いろいろな音楽に触れ、また音楽を奏で、音楽を通じて多くの皆様とお会いする機会に恵まれました。心から感謝いたしております。来年もどこかの会場でお会いできますのを楽しみにしています。

皆様、どうぞ佳いお年をお迎えくださいませ。

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