八十八夜

「愛しい五月よ、お前はまたやってきた」はシューマンの「子供のためのアルバム」の中の1曲で、美しい花が咲き始める季節を讃えた爽やかで愛らしい曲です。
5月は、いつもこの曲を弾いてからカレンダーをめくることにしています。

日本の歌で言えば、「八十八夜」あたりの季節。
立春から88日目ということで「♪夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る♪」最高の季節です。

けれど今年は緊急事態宣言中。日本中の観光地からは、人の姿が消えました。

ただラインやSKYPEで、ロックダウン中の都市に住んでいる友人達と話すと、日本は散歩や食品などの買い物が許されていることに驚かれます。家から外に出た途端、警官に逮捕されるとか、家族で買い物に出れるのはパスを持っている一人だけ・・・などの徹底ぶり。本当に自宅から一歩も出れない状況というのはかなりきついものがあると思うのですが「仕方がない。皆で乗り切るためだから」と淡々と語っていました。

いっぽう、わが日本の同僚は「大学が閉鎖で演奏会も中止。時間だけはいっぱいできた」と散歩に出かけ、近所の道で30種類、満開の花を見つけたそうです。

自然は変わらず季節の訪れを告げ、花も鳥も虫も、人間の営みや事態と関係なく移り変わっていることを感じます。

感染拡大防止のための自粛と経済活動再開の狭間で揺れる専門家の意見。判断を迫られる行政トップの重責。
見えない敵との闘いを乗り越え、かけがえのない日常が、一日も早く戻ってきますようにと祈るばかりです。

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