開放の一瞬!

3月3日の演奏会を最後に、様々な演奏会がキャンセルとなり、授業はオンラインとなり、いつもと違う日常となりました。季節は春から夏へ・・・。
ちょうどこの期間、まるまる3カ月間かかってしまったのが、ベートーヴェンの本の執筆と楽譜の校正です。

「君ほどのんびりした人間は、これまで見たことがない」と、かつて芸大の恩師、松浦豊明先生に言われたことがあるのですが、卒業以来、デッドラインに追われる人生が始まり、少しはのんびり気質が是正されてきたかと思っていました。

けれどやはり、三つ子の魂百まで。性格はそう変わっていないようです。先週「先生!来週中には手を離れていただかないと困ります!」と学研プラスで出版を担当してくださっているOさんの叱咤激励の高い声が電話の向こうから飛んできました。

「作曲家が愛したピアノからアプローチする演奏法」シリーズの「ベートーヴェン」。楽譜校正、グラビアページの写真のチェック、奏法の手引き、解説の執筆、デザインの確認、、etc.

盛りだくさんの内容でアプローチしましたが、初校、再校、三校と見直すたびにケアレスミスの訂正箇所がどこからか湧き出てきたり、音楽を言葉にすることの難しさに行き詰まったり、言葉が活字として楽譜に書き込まれたときの抵抗感や、フォントの大きさの微妙な違和感やらが、進行スピードを遅くします。

飛び交った夥しいメールの数、緊急事態宣言の中、宅急便で行われた原稿や資料のやりとり…。生誕250年のベートーヴェン・イヤーに、ベートーヴェンで押しつぶされそうになった最後の1週間でした。最終日の読み合わせ確認は、スカイプで日曜日の深夜まで。Oさんのご家族にもご迷惑をおかけしました、様々な助言をくださり、細かな作業の中でお世話になった編集の皆様おひとりおひとりに感謝です。

深夜2時。すべての資料と出力データ用紙を椅子に放り出し、「終わった~~!」と叫び、開放感に浸りながら、布団に倒れこみました。

ベートーヴェン《悲愴》《ワルトシュタイン》《エリーゼのために》《ピアノソナタ作品110》手引き&楽譜 学研プラスより来月刊行予定です。書店、楽器店などでご覧いただけましたら幸いです。

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