カッコウの季節

新緑の季節。国立音大では毎年五月半ばくらいから、レッスン室の窓をあけるとカッコウの声が聞こえてきます。先週はベートーヴェンのピアノ・ソナタ《カッコウ》を弾いた後で、この声がタイミング良く啼いてくれたので思わず拍手!

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この啼き声、先月長野県で聞いたカッコウの声より、半音くらい音程が高いのです。地域や性別によって声の高さは微妙に違うのでしょうか。

4月に神戸室内管弦楽団の定期演奏会「田園をゆく、春」でグリークのピアノ協奏曲を協演させていただきましたが、演奏会冒頭のプログラムがディーリアスの《春初めてのカッコウの声を聴いて》、後半のメイン・プロがベートーヴェンの《田園》でした。練習の前、鈴木秀美マエストロが「今回のプログラムは自然がテーマ!カッコウの声を聴いたことがある人はいますか?」と仰っった折、手をあげたのが私一人。ちょっと優越感?!でしたが、カッコウの姿を見た事はまだありません。姿は見えねど声にうっとり・・・。

でも去年、カッコウの生態系の番組を見ていてちょっとショックでした。他の鳥の巣から卵を落として、自らの卵とすり替えて孵化させる、というのです。そんな事が許されていいのでしょうか。卵を落とされた真実を知らないで一生懸命カッコウの卵を温める鳥がいくらなんでも可哀そうすぎる!と思い、美しい声のカッコウのイメージが変わってしまった瞬間でした。

いずれにしても春を告げる鳥、カッコウは音楽にも登場します。マーラーの《夏に交代》という歌曲の伴奏をしたことがありますが、カッコウが啼く春が過ぎ、夏のナイチンゲールが鳴きだす・・・という内容。神秘的な森の情景が浮かぶような作品です。

昨日から6月。川崎景太さんの綺麗なお花の卓上カレンダーをめくった途端、カッコウが一声も啼かなくなりました。あのカッコウはどこに行ってしまったのでしょうか。マーラーの歌曲によれば、ここでナイチンゲール登場のはずなのですが・・・。ナイチンゲールは、いろいろな啼き声を持っているとか。目的によって何種類も声を使い分けるなんて、手ごわい相手です。

もしも運よく啼いてくれたら、シューベルトの《セレナード》でお迎えしたいと思います。

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